猫のお宿

メイン

KP =====

クトゥルフ神話TRPG
「猫のお宿」空猫様制作

=====
それでは開始していくよ。
たくさん楽しもうね!

長谷部国重 そうだな、SANを50台に戻したいな…
特に光忠の。

KP ふふふw 戻るといいねえ

長谷部国重 彼奴のSAN減少は俺の精神と胃にくる…

KP まあお互いにね!!たくさん癒されてもらわなくっちゃ
さあ、導入を開始するよ!

長谷部国重 ああ

KP 夢とは、人の感情を具現化する最も手軽な現象。

ある日、光忠と電話をした後で眠りについたあなたは、ふっと夢の中で意識を取り戻しました。
夢の中であると気づいたのは、先程まで電話の先にいたはずの相手が直ぐ側にいたからです。
ああ、こんなにも自分はこのひとに会いたかったのかなあと思いながら、ふっとあなたは足下に視線を向けます。

──そこには、見慣れないものがありました。濡れたような石畳。
目を上げれば、周りには青々とした竹林。

そして目の前には、「温泉お宿・招き猫堂」の古びた木の看板が下がる大きな和風邸宅が存在していました──

長谷部国重 ……夢。
夢と、認識しているのか。

KP そ、夢の中だね。

長谷部国重 俺の精神は今、落ち着いているんだよな

KP まあ荒れていても構わないけども、そうだな、眠りについた後、だからね

長谷部国重 否すまない、……夢の中で、碌な事をしないからな、俺は。
光忠が居るなら猶更。
構え過ぎてしまった。…進めよう。

KP いやいや、大丈夫だよ。
周りを調べることもできるし、光忠に声を掛けることもできるよ。

長谷部国重 では、そうだな
先ずは辺りを調べたい。

KP わかった。
ふと後ろを振り返ってみると、竹林の道のずっと置くには薄っすらと霧がかかっていて、戻る道が見えないことがわかる。
目を凝らした先をよく見ると、道は途中でふっつりと途切れていてその先には何もない空間が広がっている。
それに気がついた探索者はSAN値チェック。0/1

長谷部国重 CCB<=45【SAN値チェック】
Cthulhu : (1D100<=45) > 66 > 失敗

system [ 長谷部国重 ] SAN : 45 → 44

KP おっと、調子が奮わないかな?

長谷部国重 何かあっても逃げ出せないという事か。
……俺が此処で何かをしでかす事で、
現の光忠に悪い影響がなければ良いと、思ったんだろう。

KP なるほど、では、少し構えすぎていた君の服の裾をくい、と横から引く手がある。

長船光忠 「長谷部くん、大丈夫…?」
「少し気分が悪いかな、無理は駄目だよ」
と手を取って、握りこんですりすりと摩ろう。

長谷部国重 「あ、……ああ、」

取られた手に瞬時肩が跳ねる
握り込まれて身を固くするが、
そうか、これは、
夢だからとぎこちなく握り返そう

「すまない、……行ってみよう」

長船光忠 「ああ、そうだね。行ってみようか」

KP 光忠は握られた手をぎゅっと握りかえして、君ににこりとはにかんでくれる。
1d2でSAN回復どうぞ!

長谷部国重 1d2
Cthulhu : (1D2) > 1

system [ 長谷部国重 ] SAN : 44 → 45

KP さて、他に何か調べたりしてみる?

長谷部国重 見渡す中で判る情報は他にあるか?

KP 看板と、目の前の「温泉お宿・招き猫堂」と下げられた和風邸宅がある。
周りの竹林はさっき出た情報で以上だよ。

長谷部国重 看板を見てみよう

KP 「温泉お宿・招き猫堂」の古びた木の看板だね。
裏を見ると、何やら文字が書かれている。

【いらっしゃいませ。帰り道は手をつないで】

長谷部国重 …留置こう。
あとは邸宅か…、歩を進めてみるか。

KP とても豪華で、趣がある邸宅だ。
広い和風庭園がついていて、露天風呂などもある事が竹垣などの様子から分かるだろう。ただし、人の気配はないようだ。
では歩みを進めようとした君たちの前に、目の前の風情あふれる門の前に、ふと気がつくと、一人の女将が立っていました。

女将 「いらっしゃいませ。
 本日よりご予約の長谷部様と、長船様ですね。
 お二人のお部屋はもう取ってございますので、ごゆるりとご宿泊下さい」

KP 君たちが何かを言う前に、女将は深く一礼するとゆっくりと歩き出します。
どうやら、着いてこい、ということらしい。

長谷部国重 人が居る事に驚いて一度足を止めるが、
内容には旅館と書かれていた分納得するだろうな。
傍らの光忠を見てから、ついてゆこう。

KP では光忠も君にひとつ、こくりと頷いてから歩みを進めるだろう。
君たちは辺りの様子を伺いながらも、豪奢な旅館の中を彼女について歩いていく。
そうして足を踏み入れた「温泉お宿・招き猫堂」は、いかにも老舗の旅館といった雰囲気のある旅館だった。
客室の一室に案内してくれた女将は君たちを客間まで案内すると、また深々と、美しい所作で丁寧なお辞儀をする。

女将 「お料理が用意してございますので、心ゆくまで召し上がって下さい。
 宿泊表はお布団の上にございます」

KP そう告げると、君たちを客室の扉の前に残して去っていくだろう。

長谷部国重 ……名を把握されている上に料理の支度か。
素直に甘受し難い気もするが、…まずは入室しよう。

KP 身構えてるねえ!了解!

長谷部国重 光忠も居るからな。

KP そう言われて君たちが客間に足を踏み込むと、そこには──まるで宝石のように鮮度も高く煌めく刺身や、ほかほかと美味しそうな湯気をたてる白米、とろりとした色で揺らめく味噌汁や淡い優しい卵色でぷるんと固められた茶碗蒸し等──数々のご馳走が待ち構えていました。

また、既に食事が用意されている部屋に隣接された、もう一つの座敷には布団が二組、並べて敷かれています。
その上には女将が「宿泊表」と呼んでいたバインダーのようなものが置かれていました。

長船光忠 「わ、すごいね。御馳走じゃないか」

長谷部国重 「そうだな、…到着する時間が解っていたようだ」
宿泊表を手に取って確認したい。

KP では、宿泊表には以下のように書かれている。
【宿泊表】

宿泊者様・お名前 長谷部国重様 長船光忠様
お部屋 梅の間
お料理 海の幸のフルコース
宿泊期間 いつまでも、いつでも
お帰り日時 <空欄>
帰還方法 送迎無し・お布団右より
あなたは宿泊表を見て、もしかしたら此処から出られないのではないか?という不安にかられることだろう。
SANチェック0/1D3

長谷部国重 CCB<=45【SAN値チェック】
Cthulhu : (1D100<=45) > 68 > 失敗
1d3
Cthulhu : (1D3) > 1

system [ 長谷部国重 ] SAN : 45 → 44

KP あらら

長谷部国重 俺の描いた都合の良い夢なのか、
何者かから干渉を受けているのか、
…せめてそれが判れば良いんだが。

長船光忠 「…どうしたんだい、何を見てるの?」
長谷部くんの手の中を覗きこんで確認してから、けら、と笑おう。

「なんだ、気にしすぎだよ。
 帰る方法も分からないみたいだし…少しくらい楽しんでもいいんじゃないかな?」

長谷部国重 食事に薬学等で判定を行う事は可能だろうか
黄泉竈食ひの例もある、
…口にした事で取り込まれるという事もそうそうないとは思えないが。
「……そう、だと良いんだが。」

夢だろうが、楽観的な声は幾分気を軽くしてくれる。
バインダーを閉じて適当な所へ置こう。

KP 薬学の判定は特に必要なく、品の良い旅館のお料理だ。
それぞれ目星や聞き耳などは振れるけど、振って判定せずともとてもおいしそうだよ!

長谷部国重 そうか、…なら、部屋の中に洗面があれば手を洗って着座するか。

KP そうだね、部屋風呂やお手洗いもついているだろうから手を洗うならそこでできるだろう。
君が席につけば、光忠も対面に座って、並べられた料理に感嘆の声を上げているだろう。
まるで宝石のように鮮度も高く煌めく刺身や、ほかほかと美味しそうな湯気をたてる白米、とろりとした色で揺らめく味噌汁や淡い優しい卵色でぷるんと固められた茶碗蒸し──、他にも食べたいものや、お酒なんかがあってもいいかもしれないね。
贅沢な御馳走の数々が目の前に並んでいる。

長谷部国重 時間帯はどうなっているんだろうな、夕餉になるのか…?

KP そうだね、夕食時かな。
ただ、部屋の中には時間を忘れて楽しんで、という計らいなのか時計は置かれてないようだ。

長船光忠 「美味しそうだね。……ほら、一杯どう?」
傍らの徳利を持ち上げて、長谷部くんのほうに差し出そうかな。

長谷部国重 感嘆の声につい表情を緩ませる。

「…美味そうだな。戴こうか。」

手を合わせ、戴きますと挨拶を述べてから
一杯の申し出に、近くの猪口を取って受けよう。

長船光忠 「ね、こんな豪華なお料理なかなか食べられないもんなぁ」

差し出されたお猪口に清酒を注いで、自分の分も手酌してしまおう。
何から食べるかと目線を彷徨わせながら、いただきます、と長谷部くんと一緒に呟いてお箸を手に取ろう。

KP ちなみに刺身、茶碗蒸しには目星、白米、味噌汁には聞き耳が振れる。
けど振っても振らなくてもおいしいことには変わりないからどちらでも構わないよ!

長谷部国重 「確かに家庭料理ではないからな、
 ……いつも、作ってくれて感謝している。」

盃へ酒を受ければ、手酌しようとする手を止めて
俺からも酌を返そう。
振れるものは振っておきたい。どちらも可能か?

長船光忠 「あはは、こんな時まで有難う。なかなかこんな豪華なものは作れないからねえ…」

こんな豪華な食事を見て僕の食事を思い出したのかな、なんで照れ笑いしながら、
止められるならお猪口を差し出して、お酌してもらおうかな。

KP はーい!どちらも大丈夫だよ

長谷部国重 「こういう物は日常と離れているから良いんだろう。
 お前の飯なら毎日喰いたいが、これが毎日は食傷するんじゃないか?」

酌を返しておきながら、空腹時に飲ませる事になるかとは今更気付く。
飲み過ぎるなよ、とは煩いだろうが一応添えておこう。
では目星からいこう。一品ずつか?

KP うーん、いや、まとめてで大丈夫だよ!

長谷部国重 CCB<=82【目星】
Cthulhu : (1D100<=82) > 29 > 成功

KP お、いい値だね。
続けて聞き耳もいってみるかい?

長谷部国重 そうだな、では
CCB<=75【聞き耳】
Cthulhu : (1D100<=75) > 48 > 成功

KP お、いいねいいね
ではまとめて。

【刺身】
鮮度が良いらしく、瑞々しくきらきらと輝く刺身はまるで宝石のようだ。
鮪、鯛、イカ等、海の幸が硝子の大皿に、こんもりと盛り合わせられている。
側の小皿には紫醤油が添えられている。

【茶碗蒸し】
柔らかで美しい、きれいな卵色をしている。
しいたけや銀杏、鶏肉などが散りばめられている。具沢山だ。

【白米】
ほかほかと美味しそうな湯気がたっている。
湯気と共に、甘い香りも漂ってくることだろう。

【味噌汁】
開けてみると、真っ白な豆腐とわかめ、万能ねぎが浮かんでいる。
程よい上品な出汁の香りと、赤味噌のまろやかな風味が食欲をそそる。

また、それぞれ食べるとSAN1D2回復できるよ。

長谷部国重 成程、こういった情報だったか
どんどん喰わせた方が良さそうだな。

長船光忠 「それもそうだね、きっとたまの贅沢だから美味しく食べられるんだろうね
 …はは、君が望むなら、いくらでも作るよ?」

忠告には素直に頷いて、湯呑みにお茶も準備しておこう。
長谷部くんと飲むならペースは落として、ゆっくり楽しむのがいつものパターンかな。

KP ああ、豪華な食事が食べてくださいと言わんばかりに並べられているよ。
どうぞ好きなだけ楽しんで!

長谷部国重 「そうしたらお前、本当に毎日作る羽目になるぞ。
 作り置きも助かってる、…お前の作るものは何だって美味いよ」

日頃から感謝の類は惜しまぬ様にしているが
こうして非日常の膳を前にすると、改めて湧く心地。
順番は気にせず、茶碗蒸しから戴くか。

長船光忠 「いいよ、毎日でも作りたいな。お昼のお弁当も、一緒に作ってしまえば手間じゃないし。
 …それならよかった、君がたくさん食べてくれるのは嬉しいからね」

大したものを作っているつもりもないし、時には手抜きもするんだろうけど、こんな豪華な食事を前にしてまでそう言ってくれるなんて。照れくさくなってしまうな。
僕はそうだな、お刺身に手を伸ばそう。いろんな種類があって迷いながら、鮪を摘まむ。

KP 茶碗蒸しには、しいたけや銀杏、鶏肉などが程よく散りばめられている。一口食べると出汁の旨味と卵の優しい味がふわりと広がるだろう。
SAN1D2回復。
光忠の分も振っちゃおう。こっちも1d2だな

長船光忠 1d2 SAN回復
Cthulhu : (1D2) > 2

system [ 長船光忠 ] SAN : 47 → 49

長谷部国重 1d2
Cthulhu : (1D2) > 1

system [ 長谷部国重 ] SAN : 44 → 45

長船光忠 「ん~美味しい、すっごく新鮮だ。
 脂ものってるし、こんなおいしいお魚なかなか食べられないよ」

おいしさに目を細めて、たまらず声を上げてしまうだろうな。
長谷部くんも食べてみなよ、と幸せそうな顔でおすすめしておこう。

長谷部国重 「…本当に毎日喰えたらな。
 弁当か…、卵焼き喰いたくなるな…あの、朝に作ってくれるだろう」

同居でもしない限りかなわぬものを、
夢だからと甘えた言葉が口を突いて出るような。
朝食に何度か作って貰っているだろう品を思い浮かばせながら
茶碗蒸しに手を付けている。

光忠が勧めてくれる刺身にも手を伸ばそう。

長船光忠 「卵焼きかい、君好きだもんねえ。
 ふふ、…君と一緒に暮らせたらいいのになあ」

KP お刺身は鮪、鯛、イカ等、海の幸が硝子の大皿に、こんもりと盛り合わせられている。
脂がたっぷりとのっていて、食べるとまるで口の中でとろけるようにほどけていくだろう。
SAN1D2回復。

長谷部国重 「焼き加減も味付けも好きだからな、また作って欲しい。
 そうだな、…何か手立てがあれば良いんだが。」

俺が俺でなくなるのが一番早いが
其れでは元も子もないのが悩ましい所だ。
鮪と烏賊を選んで山葵醤油で刺身を味わい、盃を傾ける。
1d2
Cthulhu : (1D2) > 2

system [ 長谷部国重 ] SAN : 45 → 47

長船光忠 「……ん、ごめん。…手立て、なんて。僕は今すぐでも、いつだっていいのに」

お酒を少し飲んでしまったからか、普段は言わずに控えているような言葉がぽろりと出てしまったんだろうな。
言ってから気が付いて、戻りもしないのに手で口元を押さえてしまうだろう。

KP おっと、イカだね
食べるとわさびが多かったようで、ツンとした刺激に思わず涙が出てくるだろう。
それを見た光忠が、大丈夫かい、と少しばかり君の様子に笑いながら、君の眼もとに手拭いを押し当てて、思わずあふれた涙を拭ってくれるだろう。
両者SAN1D4回復。

長谷部国重 1d4
Cthulhu : (1D4) > 2

長船光忠 1d4 SAN回復
Cthulhu : (1D4) > 3

system [ 長谷部国重 ] SAN : 47 → 49
[ 長船光忠 ] SAN : 49 → 52

長谷部国重 加減を間違えた山葵の量に、目頭を押さえようとして
世話を焼かれた事が面映ゆく、有難うと小さく笑う。

「……そうだな、お前はそうだ。
 ああ、…酒を飲むとつい飯を忘れてしまうな」

俺だけだ。
そんな事は百も承知している。
一度盃を置いて、晩酌に傾きそうだった食事を改めよう。

長船光忠 「いつも君にばかり、不安な思いをさせてしまうね……。
 すぐじゃなくていいから、落ち着いたら、ちゃんと話をしようね」

いつだっていいから、待ってるから、と添えて、にっこりと笑ってみせる。
長谷部くんの言葉にお酒ばかり進めてしまっていたことに気が付いて、僕も食事に手を伸ばそう。まだまだ楽しめそうだ。

長谷部国重 「落ち着いたら…、そうだな、いつか。」

いつかきっと
直ぐでなくて良いというのは
意図した先送りなのか、判断がつかず
こんな状況でする話でもなかったと、一度口を噤む。

刺身や煮物と米を食べ進め、
ひとつひとつの味を楽しんでは、
時折盃に伸ばしそうになる手を味噌椀へ切り替えて。

長船光忠 「そうだ、ご飯食べたら、少し散策してみようよ。旅館の周りもいい雰囲気だったしさ」

いつか、との言葉には、ん、とひとつ頷いて、それから少し落ちた空気を破るように、意識して明るい声で言おう。
なかなか自分じゃうまく作れない茶碗蒸しの蓋を開きつつ、ね?と首を傾げよう。

KP 白米は一粒一粒の米粒が立っているのが分かるだろう。
箸で一口掬って食べると口の中でほろほろと崩れるように柔らかく甘い。
SAN1D2回復。

味噌汁の程よい上品な出汁の味と、味噌のまろやかな風味が食欲をそそる。具はわかめと豆腐とスタンダードなものだが、大変美味しい。
SAN1D2回復。

長谷部国重 1d2+1d2
Cthulhu : (1D2+1D2) > 2[2]+2[2] > 4

system [ 長谷部国重 ] SAN : 49 → 53

KP おっいい数字!

長船光忠 1d2 SAN回復
Cthulhu : (1D2) > 2

KP 光忠調子いいな

system [ 長船光忠 ] SAN : 52 → 54

長谷部国重 「……ああ、少し歩いてみるか。
 此処がどんな場所なのかも知らないからな」

明るい声に気を遣わせた事を察し、
またやって仕舞ったとの自己嫌悪を
せめて声には滲まぬ様に。

食事は他愛ない話を選んで進め、
序に酒も一本二本程開けたかもしれない。
最後には御馳走様、と手を合わせて終いにしよう。

長船光忠 「そうだね、少し食べすぎちゃったし、腹ごなしにもちょうどいいかも」

多いかなと思っていた食事もすべて平らげてしまって、苦笑して腹を摩りつつ言おう。
お酒は長谷部くんの4分の1も飲んでないだろうけど、頬がちょっと赤くなるくらいには酔っぱらってるかな。
ごちそうさまでした、と声を揃えて言おうか。

長谷部国重 全ての皿を空にする事は出来ずとも、
普段外で物を喰う時よりは胃に収められただろう。
光忠の顔色を見て、湯飲みに白湯を注ぎ差し出しておく

「歩く事で、酔いが回らないか?
 取敢えず少し水分を取っておくと良い。」

長船光忠 「そんなに飲んでないつもりなんだけどな、……毎度気を回してもらってありがとうね」

長谷部くんがずいぶん食べてくれたようで、そのことには目を細めているだろうね。
…しかし、話しているうちに、無意識に少し飲みすぎたのかな。
差し出された湯呑みを受け取って、素直に口をつけよう。

長谷部国重 「体質だからな、気を付けるに越したことはないだろう。
 ……外は暗そうだ、歩くなら館内か、周辺に留めておくか」

銚子の2本程度じゃ顔色も変わらず
足取りにも問題は無いだろうとの自負はあるが
何かあった時に直ぐに助けられそうな範囲が良いだろう
己も湯飲みへ白湯を注ぎ、一口二口咽喉に流しておこう。

長船光忠 「君の晩酌に付き合えるくらい飲めたらいいんだけどなあ」

軽く苦笑してから、そうだね、と頷いて、湯呑みの中身を飲み干してしまおう。

KP さて、ということで部屋から出てみるかい?

長谷部国重 そうだな、部屋を出て歩いてみよう。

KP 部屋を出ると、雰囲気を統一されて和風な雰囲気の廊下はやや薄暗くなっている。
歩くのに困るほどではないが、照明が落とされていて随分と落ち着いた雰囲気だ。
しん、と静まり返って、人の気配はない。

目星と聞き耳が振れるよ。

長谷部国重 目星から振ろう

KP はいはい!どうぞ!

長谷部国重 CCB<=82【目星】
Cthulhu : (1D100<=82) > 99 > 致命的失敗

KP んっ
こないだからやたらと目が悪いね…?どうしちゃったかな

長谷部国重 警戒しすぎて眩んだかな

KP 処理かんがえておくから聞き耳もどうぞ…!

長谷部国重 CCB<=75【聞き耳】
Cthulhu : (1D100<=75) > 13 > スペシャル
落差よ。

KP 上下差!

長船光忠 CCB<=67 目星
Cthulhu : (1D100<=67) > 7 > スペシャル

KP www

長谷部国重 Cならなあ、Fを消して貰うんだが。

KP よし、2個出たしファンブルは打ち消しだ!

長谷部国重 ああ、有難う。光忠の御蔭だな。

KP では聞き耳の方から情報を出そうか。

どこかから猫の鳴き声が聞こえる。
その声の主を探して廊下の向こうを見れば、ちらりと歩いて行く猫の影を見ることだろう。
その影が、人のように服を着て二本足で歩いていたように見えて二度見をしてしまうかもしれない。

長船光忠 「梅の間の他に、松の間と竹の間……縁起がいい取合わせだね。
 奥にも扉があるみたいだよ、外に出られるのかな」

廊下に並んだ扉を指さして言おう。
襖には綺麗な日本画風の松と竹の絵が描かれていて、どの部屋にも招き猫の絵も添えられているみたいだ。

長谷部国重 廊下の向こうに見えた影へ、二度見をするが…
夢だしな…。
然し、己の夢でそんな光景が出る事に意外な思いを抱くだろう。
「松竹梅か、…成程な。
 少し先まで行ってみるか?」

長船光忠 「そうだね、行ってみようか」

長谷部国重 奥の扉を目指してみよう

KP 奥の扉だね、了解!
扉を開けた瞬間、すうっと心地よく冷えた空気が胸を満たしました。
こじんまりとした、玉砂利が敷かれ飛び石が置かれた、古風な日本庭園であることがわかります。
お宿の部屋の名前にちなんでいるのでしょうか、松の木、竹の木、梅の木があり、わびさびを感じる美しさで植えられています。
梅の花は季節でもないのに美しく咲き誇っています。

庭園は竹垣で囲われており、竹垣には外に出る小さな扉が有ります。奥の方には小さな手水舎が見えました。

長谷部国重 そういえば今の季節はいつなんだ? 夏か?

KP シナリオで特に指定はないんだよね
夏くらいにしておこうか

長谷部国重 ならば確かに梅の木は季節外れだな
外に出る履物などはあるんだろうか
あるなら少し庭を歩くのも良いな

KP ああ、自由に履いていいらしいサンダルなどがいくつか揃えられているだろう。
出てみるかい?

長谷部国重 そうだな、…足元に気をつけながら行ってみよう。

KP ではサンダルをつっかけて外に出てみるということで。
光忠も多少酔ってはいるようだけど、それほど危なげもない足取りでついてくる。

日が落ちているからか、それなりに風は涼しく、時折水の音なんかも聞こえてくるだろうね。

長谷部国重 光忠の足取りを時折確認しながら、ゆっくり歩こう。
手水舎の方も見てみたい。

長船光忠 こんな季節に梅が咲いてるのか、と不思議に思いつつ、時々心配するようにこちらを見ているのに気が付いて、足元に気をつけながら進もうか。

KP 手水舎は、ごく普通の神社などで良く見るものとそれほど変わりはないが、水があふれている場所が二つに区切られています。

『ここは想いの手水舎。好きな水をお飲みください、きっとそれはあなたの大切な人とあなたを癒やすことでしょう』とへたくそな字で書かれた木の立て札があり、ぽんと猫の手マークが墨で押されています。
水と、手水舎、それぞれ目星が振れるよ

長谷部国重 ではよく見てみよう、其々に目星を振る。

KP はーい、どうぞ!

長谷部国重 CCB<=82【目星】<水へ
Cthulhu : (1D100<=82) > 61 > 成功
続けて振って良いか?

KP 了解!では情報もまとめて出そうか

長谷部国重 CCB<=82【目星】<手水舎
Cthulhu : (1D100<=82) > 17 > 成功
ん、良かった。二つとも成功だな。

KP お、調子がいいね
満たされているのは透き通った美しい水で、清浄であることがわかります。
特におかしなものが入っているような感じはありません。

それから、手水舎のよく見ると水が溜まる岩のふたつのくぼみの上に、それぞれ『感謝』『親愛』と書いてあるのが見つかります。

長谷部国重 では、俺は感謝を選んで飲んでみよう。

長船光忠 それじゃあ、僕は「親愛」にしてみようか。
柄杓をとって、口に含んでみようか。

長谷部国重 柄杓を取って手を清めてから左手で水を飲もう。

KP 感謝を選んだ人は、相手に言いたかった素直な感謝を、それから親愛を選んだ人は、相手への愛情を伝えたくなることだろう。

長谷部国重 ……感謝は口に出すようにしているんだが。
そうだな、…

「俺に付き合ってくれて有難う、光忠。」

柄杓を戻しながら、傍らへ笑いかけよう。

長船光忠 「…そんな、感謝されるようなことなんて、何もないよ。
 僕がしたいから、君の側に居るだけなんだから」

笑いかけてくれた長谷部くんの髪を指先で少し撫でて、笑い返して、
それから一歩分の距離を詰めて、唇を触れ合わせようか。ちゅう、と少し音をさせて。

「好きだよ、君のそんな優しいところも、臆病なところも、全部好き。
 …君にだから、そうしたいって思うんだよ」

長谷部国重 「……お前は優しいから、 」

触れる指先に怯える必要はなくとも
詰められた距離に無意識肩が薄く跳ねた
重なった唇の感触にも

「―――…有難う、
 お前にそう言って貰えると、嬉しいな
 ……覚めなければ、良いのに。」

伸ばした手を頬へ触れさせて
薄く指腹で撫ぜてから手を下ろす。
夢ならば、この位は
この位触れるだけなら、赦されるだろうか。

長船光忠 「僕が誰でも彼でも優しくするわけないってことくらい知ってるだろ、
 ……特別なんだよ、君だけだ」

小さく跳ねた肩を撫でおろすように手を添えて、それから近い距離でもう一度、鼻先に口付けよう。
頬に触れてくれた指には、自分から頬擦りをするように顔を寄せて。
「夢じゃなくたって、何度だって言ってあげるから。…そんな顔、しないで」

長谷部国重 「そう、思いたがっているんだろうな、…俺が、ずっと。
 ……有難う、光忠。」

付き合いも長い
様々な経験も共にして来て、
『特別』の枠に居る自覚はある。

触れ合う膚から伝わる温度に、眼を細め
指腹で目許を緩々と薄く撫ぜる

「……言ってあげる、なら要らない。
 お前が、言いたい時に言ってくれるのが一番良い。」

己が望めば言ってくれる、のだろう
何だって己が望んでその通りにさせている

言ってあげる、してあげる、なんて

現状を示す言葉其の儘過ぎて 
思わず眉尻を下げる儘小さくわらう。

長船光忠 「ごめんね、いつも僕の言葉で君を傷つけてしまう。
 不安にさせたいわけじゃ、ないのにな……」

触れてくれる指に手を重ねて、包み込む。
眉を下げて、あんまりかなしそうに笑うものだからたまらなくなって、
そのまま肩を、腰を、両腕でぎゅう、といっぱいに抱きしめてしまおう。

「長谷部くん、好きだよ、愛してる。
 信じてもらえなくても、伝わらなくてもいいよ、
 僕はちゃんと、ずっと想っているから」

長谷部国重 抱き締める腕の力強さに、温度に
申し訳なさよりも安堵を得てしまうのだから
いつだって始末に負えない

「……有難う。ちゃんと、…どうにか、するから。
 本当に、この儘覚めなければ良いのに……」

ちゃんと、
ちゃんとお前が安心して隣にいてくれるように。

そっと手を伸ばし
恐る恐る抱き返しては肩口に頭を預け

「愛してるよ、…
 お前と同じ気持ちだけで愛せたら良いのにな。」

預けた顔は直ぐに上げて
そっと身を離そうと。

長船光忠 「僕は全部ひっくるめて、君を好きなんだ。
 夢から醒めたって、君が君である限り、それは変わらない」

抱き返してくれた腕が嬉しくて、懐くように肩口に寄せられた頭をそっと撫でてみる。
たった一言に、胸のうちが満たされて、少し熱の引いた頬がまた熱くなって、
離れようとする長谷部くんの蟀谷にまた唇を寄せて、それから名残惜しく思いながら回した腕に込めた力を緩める。

それからふらり、と迷うように視線を彷徨わせてから、長谷部くんの瞳を覗き込んだ。

「……君には、つらいかもしれないけど、
 僕は、君のありのままの気持ちの全部が嬉しいよ」

長谷部国重 「その言葉は、… 否、…有難う。」

頭を撫でる手が心地良くて、
蟀谷へ受ける口付けが嬉しくて、
現で聞けたらと願いそうになって、
首をそっと横に振る。

幸せな夢の方が、
目覚めた時に辛いのを知っている。

「……お前は、
 俺が、苦しんでいる方が好きって事か?」

覗きこまれた先の蜜色
ありのままを望まれて、思わず揶揄に誤魔化してわらう。

「其れとも、求められている状況だけが好きなのか」

酷い男だな、と
いつかも柔く詰った其れを持ち出して
わらう事は上手くいかなかったけれど。

長船光忠 「君に苦しんでほしいわけじゃないけど、
 他でもない君に求められることは嬉しいよ。
 
 ……また、そんな顔、」

くるしいのか、かなしいのか、つらいのか、
そんなことも分からないけれど、下手くそに笑ってみせた頬を両手で包み込んで、
笑みを崩してやろうと、指を頬に押し付けて。

「そんな顔するくらいなら、笑わなくていいよ。
どうして僕の前で誤魔化そうとするの、つらいなら、かなしいなら、そう言えばいいだろ」

長谷部国重 「求める事自体、間違ってたんだ。
 無い物を欲しがったって、仕方ないだろ」

欲しがるだけ苦しむだけで
欲しがるだけ空しいだけだ

そんな顔、と両手で包まれれば
己から掌へ押し当ててから力を抜き

「……勝手な欲で勝手に苦しんでいるから。
 お前に伝えて心苦しくさせたくは、ないんだ。
 どうにか、消す方法はずっと探しているから…」

知識を蓄えて
手立てを模索して
現実的な方法と夢のような可能性と。

「きっと何かある筈なんだ。」

長船光忠 「ねえ、僕は、待っててほしいって言ったよね。
 ずっと考えてた僕のことなんてしらんふりで、無いなんて決めつけるつもりなんて、
 そっちのほうがずっと勝手だと思うな」

「僕のせいで苦しんでるんだから、僕にぶつければいいのに、
 それを受け止める甲斐性すらないと思われてるなら心外だよ。
 恋人なんだろ、なんで一緒に悩もうとしてくれないんだ」

ひとりで全て抱えさせてしまった、なんて自分に対する怒りに語気が荒んで、
ぐ、と奥歯を噛みしめてももう遅い。
ごめん、と小さく呟いてから、少し力を入れすぎた頬から手を離した。

長谷部国重 グ、と指先に籠る力と
怒気を孕む声に目を見開く
こんなに怒りを顕とされた事など殆ど無い

指先から力が失せてから、
視線を伏せ、言葉を探す間を幾分か挟む。

「待って…待っていたかったさ、
 お前の気持ちも欲もあるなら、待ちたかった」
「待てない、俺が悪い」

歪みそうになる表情を掌で覆い隠して
緩々と息を逃す

「大体…、ぶつけて、どうなる。
 お前は待ってくれって、…言ったのに、
 大人しく待てない俺が悪い、だけだろう。」

「お前の他には欲しくないなら、
 ……なくす、しかないだろう、こんな」

夢の中という油断があるから
こんな情けない事まで、吐露してしまう。

長船光忠 「最初っから君が求めているものを分かってて、それでも待って、なんて臆病なこと言った僕も悪い。
 どっちも悪いんだから、一緒だよ」

ふう、と息をついて、呼吸を整えてから、
今度は力を籠めすぎぬように、腕を伸ばした。
顔を覆ってしまった長谷部くんの髪を指で梳くように撫でて、それから僅かに覗く額に、くちづけて。
僕しか欲しくない、なんてそんな殺し文句に心が躍るくらいには、単純な答えを持ち合わせているのだ。

「僕が傷つかないように、たくさん考えてくれたんだよね。
 でもこれは、僕と君の問題なんだよ。
 つらいのなら、僕は一緒に悩みたかったよ」

長谷部国重 「知って分かった上で、
 其れでもお前が出した答えが其れなら、
 俺は、ただ待てば良かっただけだったんだよ」

緩く梳き撫でる指先が、
額へ押し当てられる唇が
自然と力を抜けさせて、鈍々と顔を覆う手を下ろし
其れでも視線は真直ぐ向ける事が難しく
惑う様に揺らいだ後、落ちてゆく

「わからない、…だろう、
 ……お前が煩う事も、
 軋み続けることも、全部なくなるんなら
 俺がどうにかできるなら、それが、一番だと」

待てなくて、
どうにもできなくて、
消す事もまだできなくて

「……つらかった、のか、これ」

心の臓が軋んで息が出来ない事も
自己嫌悪に吐きそうになる事も
夏に膚が粟立つ程に寒い事も

つらいと言って良かったのか。

長船光忠 下ろされた手と、くらりと落ちていった視線の先をつい追って、
それから落とされる言葉に、髪を撫でおろす手は止めないまま。

「どうにかしようとして、できてないから、つらいんだろう。
 …君はどうも、苦しいこととか、つらいことに鈍いからなあ……」

はじめて気が付いたといわんばかりの弱弱しい呟きに、
触れていた頭を、そのまま胸に抱えるように、引き寄せた。
一緒に苦しみを分かりあいたいと約束したはずなのに、
いつも、どうして長谷部くんだけを苦しませてしまうんだろう。

「ひとりで、頑張っていたんだよね。
 もう苦しまないように、僕を悩ませないように、って。
 ……ごめんね、ひとりで、なんて、つらかったよね」

長谷部国重 「出来てない、から、駄目なんだろ う
 もう少し何か、ある筈なんだ
 服薬だけじゃかなわないなら、他にも」

思い付いた物は片っ端から手を伸ばして
試せばきっといつか何れには。

引き寄せられる儘、
埋めた胸元で呆けたように小さく紡ぎ
落とした手を固く握りしめ

「頑張って、ないだろう。
 成果なんて、なにひとつ、出てないんだ。
 つらい、としても、
 …認めて其れで何が変わる訳じゃあ、ない」

こんな、こんな事を言っても仕方ないのに
酷い子供の駄々のように紡いでは身を震わせて
情けない顔を埋めている。
すまない、と謝る声はくぐもって届いたかわからなかった。

長船光忠 「君が傷ついて、無理をして、それで僕が楽になったところで、
 どうして僕が嬉しいと思うの。
 やめよう。もうやめてよ、お願いだから」

どのみち苦しむのは君ばかりで、どの口がそんなことを言えようかと思えども、それでも嫌だった。
抱きしめたまま、震えた背中を柔く叩いて、細い髪は壊れ物に触れるように、そっと撫でて。

「どうして、自分で全部否定してしまうんだ、
 頑張ってるだろう、たくさん考えてくれたし、…それで、そんな答えにたどり着いたとしても。
 ……長谷部くん、自分で自分を蔑ろにしないで」

見てる僕がつらいよ、と呟いて、ふ、と震えた吐息をついた。

長谷部国重 「すまない、…
 お前を、哀しませる心算も、苦しめる心算も、
 無い…無かったんだ、本当に。
 言うつもりなんて、……本当に、なかったんだ」

拳を解いて、
震える指を、手を躊躇いながら擡げて
背に回す事までは未だ出来なくて、
其の背面の、上着の布地を掴む

「……じゃあ、
 どう、すればいい、んだ?
 是しか思いつかない、…こうするしか、
 ――……夢から覚めたら、
 その時は絶対、こんな、… 出さないように、するから」

見ている側が辛いなんて
そう言われてしまえば口を噤むしか思いつかない。

ぶつけて叶う訳でもない
苦しみを背負わせるだけで

是以上軋む事も、きっと耐えられない

「どうしたら、…お前が望む、俺になれる」

長船光忠 「責めてるんじゃないんだ、
 君をひとりで悩ませたのが不甲斐なくてさ。
 ……謝るのは僕のほうだよ、ごめん」

ぐ、と躊躇いがちに、縋るようにも思えるほどに、
返してくれたことがどうしようもなく愛おしくて、嬉しかった。
強くしすぎないようにと気を付けても、腕に随分、力が籠ってしまいそうになる。

「そのままの君で居てよ。
 ああでも、できることなら、僕をもっと信じて、
 夢じゃなくたって沢山、話をしてよ。
 僕は君を、そのままの君を好きでいるから。愛してるから」

「僕、向き合ってちゃんと考えたよ、
 ……でもその答えで、君のことを傷つけたくはないから」

少しだけ身体を離して、顔を覗き込むように、額と額をこつんとぶつけて。
信じて、お願い、と懇願のように呟いては、情けなく笑って見せる。

長谷部国重 「……わからない、だろう。
 お前が愛してるって、言ってくれて、
 是は俺の都合の良いだけの夢なんだって、
 ……ああ、なら、
 …今だけは何だって、信じられるのか」 

いっそ夢の中と割り切って
恐ろしくて逃げてしまう事からも
何からも、逃げない儘信じられるのだろうか

「―――お前の、出した答えを、教えて欲しい。
 俺を傷付けるような事なのだと、
 覚悟をして、聞くから。」

向き合ってちゃんと
考えて出した答えが
俺を傷付けると判じるのなら
こたえなど、聞かなくとも知れそうなものではある、けれど。

視線を漸く向け直して
蜜色を見詰め返すまま、ゆると薄く首を傾いだ

「なにを、…信じれば良い?」

ただ信じろと言われても、
何をどう、信じて欲しいのか判らずに
また問いを重ねて仕舞う。

長船光忠 「違うよ。
 ……僕のことを信じられなくて、
 また君が傷つくんじゃないかって心配なんだ。
 愛してる、ってどれだけ言っても信じてくれないから、君は」

信じてもらわなければ、何を言ったって意味がないって分かってる。
一度は君を傷付けた身で、二度目を貰おうなんておこがましいとも分かっていて、
それでも、これ以上君が僕を信じられずに傷つくところは見たくなかった。

「僕の言葉。
 もう君に嘘はつかない、全部本心からのものだって、…信じてほしいんだ」

あの時だって、嘘をついてつもりでは、なくて。
でも、自分の心を偽って君を傷つけたなら、同じことなのだろうな。

不安げに揺れる藤色を覗き込んで、頬に指先を、触れさせて。

長谷部国重 「其れは、…俺が、無理矢理言わせてる、からな。
 莫迦な事をしたと、思ってはいるんだが…
 あの時は其れでも良いから、欲しかったんだ」

そうして後々苦しいとわかっていても
どうしても、何をしたって其れが欲しかった。

「俺が、望むから言うなんて事もなく
 お前が、…光忠が想う事だけ、言うって
 そう、…いうのか?」

はつ、と瞬いてから
緩々、眼を見開いた

眉尻を下げ、眼を細め
ああと声を零しては、触れに来る指先に口を緩ませて

「―――そう、してくれるなら
 一番、嬉しい。…どんな言葉でも、構わない」

「俺が望む事に、応じてくれているだけなんて
 思わないように、するから」

長船光忠 「言っておくけど、愛してるも好きも、ずっと本心だよ。
 君が言ったのは、僕の気持ちを愛だと受け入れるって、それだけだろう、
 …僕は、自分の気持ちを捻じ曲げて言い換えさせられたつもりなんかないよ」

咎めるように、驚いた様子の長谷部くんの頬を指先でやわく挟み込んで、けれどそれもすぐに解放した。
嬉しい、と甘えるように笑った顔に、同じように目を細めて返して、それからひとつ、薄く、息を吸って。

「君を、長谷部くんを、愛している。
 …僕の自覚が追いつかなかっただけで、きっとずっと、君と同じ意味で愛していたんだとと思う。

 君が『困らせる』って言ったことだって、困らない。
 触れたいし、触れられたいし、……もっと、いろんな顔を見たい。
 ……自分でも信じられないくらい、君を求めて、しまうんだ」

浅ましくて、汚く思えて、ずっと認めることを拒んでいたけど、
それでもこれが本当の気持ちだった。
頬を撫でた指をそのまま唇に触れさせれば、つい、となぞるように滑らせた。

長谷部国重 「好き、は兎も角、
 …愛していないって繰り返したのはお前だろう。
 愛している、と愛していない、愛せない、じゃあ
 俺には、否定の方がすんなり信じられたんだ。」

愛されることに馴染みがなくて
欲されない事は慣れてしまった
柔い咎めの指先に薄らと眉尻を寄せ
軽口の調子で紛れさせようとしても
語尾が情けなく僅かに震えてしまう

息を吸い込む動作に薄く肩を揺らすも
紡がれる言葉を逃さぬよう、視線を向けて

――耳にする内に、
視線が戸惑い揺らぎ、狼狽へ伏す

「お前、……そんなの、」

嘘だと、求められた覚えがない、なんて
そう否定をしかけて、先の遣り取りを思い出し噤む。
俺が望んだからではなく
光忠の本心を教えてくれるのだと

頬を滑っていた指が唇へ触れ、
思わず視線を蜜色へと戻す

「……信じたい、…から、
 俺にも、わかるように …もっと教えてくれないか」

どうとでも取れる言葉では
彼方此方に猜疑を挟んでしまうと、絞り出して。

開いた唇の間へ指を迎え
極々淡く、歯を立てた。

長船光忠 「もう、傷つけたくなかったんだ、けど、
 …ごめん、どうしてあんなこと、言っちゃったんだろ」

二度も同じことを繰り返したくはなくて、
それでも、それで諦めさせてちゃ世話ない話で。
君の震えた声に、どうしようもない自責の念だけが浮かんで、眉根を寄せる。

「君と初めてキスしたときに、さ。
 ……ぐちゃぐちゃにしそうだって言われて、
 それで、……僕、」

君に乱して、乱されたくて、しかたなかったんだ、なんて。
そんなこと、言うつもりもなかったのに、
それでも信じてほしくて、恥じらいに少しばかり声を窄ませながら、美しい藤色を覗き込んだ。
甘噛みのように指先に歯を立てられて、
言葉のひとつに、どきりと胸が早鐘を打って、
……それから、考えてしまうのは。

「ねえ、僕の言葉を信じて貰えないままなら、
 ……本当に今度こそ、取り返しのつかないことになってしまう。
 僕、そんなの嫌だよ」

「……夢だからって、そんなことを理由に信じるのなら、
 今は何も、したくないな……」

咎めるように柔い唇を押して、それから手は、あたたかい頬から離して。
視線は伏せて逸らして、ひどく弱気な声で言う。

長谷部国重 俺が望んだからではなく
光忠の本心を教えてくれるのだと

其れを信じたいと、心を動かして
向けてしまった視線も行動も何もかも
軽々に抱いて仕舞った期待も

「……――――そう、だな。」

淡く捕らえた指を解放し
視線を長船から外して落とす。

信じて欲しいと向けられた言葉を鵜呑みにして
はしたなく飛びついた事を、咎められた心地と
夢の中迄も拒まれた事への諦念は同時に湧いて
視線を何処に据える事も出来なくなって、双眸を伏せる。

「……すまない、また俺は。
 こんな、だから駄目だって、いうのにな」

是は矢張り、夢で
信じてくれと言われた事も
過日の事を、気恥ずかし気に吐露された事も

信じたくとも

「お前が嫌な事なんて、させる心算もない
 夢だから、なんて
 お前がそう、……言うなら」

外れる手指を追う事はせず
すまない、と繰り返して少しだけ身を退いた。

「もう、触れない。
 すまなかった、… そろそろ、…中へ戻ろう」

堀川国広  

長船光忠 どんな答えを、一体期待していたんだろう。
しばらくの沈黙のあと、ぽつりと落とされた返答に、
ああまた、間違えてしまった、って、頭の中がさあっと冷やされていくような心地だった。
ごめん、と絞り出すような言葉が何のためなのかは、僕にも分からなくて。

「…信じて、ほしくて、
 本当に僕の本心だって認めてくれるのか、怖くて、……、
 それで君を疑った、僕が悪いんだ、
 ……ごめん、君のせいなんかじゃ、ないから」

視線を上げたところで、取り繕ったところで、もう遅かった。
離れたほんの数歩分の距離を追いかけそうになって、手を、伸ばしそうになって。
でも、決意のように、突き放すように落とされた言葉に、びくりと、肩を揺らしてしまう。

「違う、ただ、君に信じてもらえないのが嫌、で……、
 ……怖いんだ、またあんな思い、したくもさせたくもなくて、
 君のこと分かりたいのに、君にそんな顔なんかさせないで、
 ずっと、一緒に幸せになりたくて、
 触れてほしいし、触れたいってずっと思ってるのに、」

「…っ、君のこと、好きなのに、愛してるのに、…愛したいのに、
 ……どう、したら、…………、」

問いかけそうになって、けれど、口は噤んで、かぶりを振った。
あんなことを二度も言った身で、それでも答えが欲しいなんて、あまりに烏滸がましい。
戒めるように、グ、と強く下唇を噛み締めて、それから視線を上げてみる。たとえ君の視線と絡まなくても良かった。

「好きだよ、愛してる。
 どんな君でも、たとえ僕を嫌いな君でも、変わらないから。
 ……信じろとは言わないから、覚えていて」

「うん。…僕、頭冷やしてるから、先に行ってて。
 少ししたら、部屋に戻るから、」

長谷部国重 紡がれ重なる言葉を、黙って受けた。
信じられなくて
信じられなくて怖くて
そうして拒絶に至ったのだと

「お前のことを、嫌った事もなければ、
 嫌う心算も、予定もない。」

「……疑われる様な、事しかしていない俺が悪い。
 お前の事を、傷付けて、…害して、ばかりだ。」

余計な欲を持って感情を持って想いを持って
勝手に期待して自制も出来なかった、ことを
どうしたら相手の所為になんて思えるのか。
信頼と実績は己の手で打ち砕いて、
前科ばかりが、積み上がってゆく。

「すまない、…本当に。
 気持ち悪かった、だろう。あんな。
 ……撫でられて、舞い上がって」

視線を落とした儘、自嘲の嗤いを浅く落とし
其れも、一つ息の間に消した。

先に、の声に、視線を上げぬ儘頷いて
庭園の中、静かに踵を返す。

「……お前の言葉だから、信じる気になった。」

夢だから
そんな理由では、なかったのだと。
ほつり、届くか如何かに落としては来た方向を戻ってゆく。

長船光忠 咄嗟に手を、伸ばしていた。
届くなら、去って行こうとした君の手を取って、
縋りつくように、ぎゅうと力いっぱい握ってしまうだろう。

「なんで君はいつも、ひとりで納得して、
 そうやって勝手に、ひとりで傷ついてばっかり、」

信じて、と乞いながら君を疑って、傷つけて、
自分の不安を優先させて、そんなの最低だって、
…君が言うわけもないけれど、君がひとりで傷つくくらいなら、
そう詰ってくれるほうがどれほどよかっただろう。

「嬉しかったんだよ、
 …でも、嬉しかったから、
 また、……あのときみたいに、嘘だと思われたら、
 ……今度こそ、君と、一緒に居られなくなる、って」

「僕の言葉を信じてくれようと、したのに、
 …僕の、自分勝手な気持ちで無碍にした」

ごめんなさい、と呟いた声がひどく震えて、
それでも握った腕は離せなくて、そのまま抱き寄せようと、手を伸ばした。

長谷部国重 踵を返し、庭園を去るべく踏み出した足が
腕を取られた事でギシリと固まり、止まる

振り払う事も出来ず
自ら戻る事など、尚

「……、一緒に、
 いられなくなる方が、お前は楽じゃ、ないのか。」

嗚呼、
こんな、
こんなに、詰るような調子で紡ぐ心算は無かったのに。
落とした視線一つ引き上げられない儘で、零れ落ちて。

「良いんだ、…お前がしたくないなら、何も請わない。
 今迄出来ていなかったが、これから、こそは。
 ……だから、」

だから、
何を如何すれば、良いのだったか。
先程から頭蓋の中身が巧く巡ってくれずに言葉に難儀をする。

引き寄せる動きに抵抗はなく、
踏鞴を踏むようにバランスを崩した体で倒れ込むに近くなり、
遅れて、足を踏み出した。
余り重みを預ける事にならぬようにと気を払い、息を吐き出す。

「良いんだ、… 気遣わせて、すまない。」

ありがとう、と零す声は震えていなかっただろうか。

長船光忠 「一緒にいたいって、ずっとそう言ってるじゃないか。
 ずっと、考えてるんだよ。
 どうしたら、君と一緒に生きていけるのかなって、ずっと、」

一緒に居たいから、苦しくとも、こんなに藻掻いている。
振り向くこともなく、それでも足を止めてくれた長谷部くんの手を、ぐいと引いて、
素直に胸の中に飛び込んだ温度を精一杯に抱きしめて、それでようやく安堵できた。
…まだ、拒まれはしないのなら、と。

「受け入れて、ほしいんだ。
 こんな臆病でも、君のことを愛してるし、
 君に明け渡してしまいたいと思ったことも、
 ……もっと、君をほしいと思ったことだって、全部、僕の本音だから」

ぎゅう、と腕の力を強めて、僕に凭れてしまえと胸に押し付けて、
震えてしまいそうな小さな声にはひとつ、ちがうよ、とかぶりを振って返した。

「僕が、こうしたいからしてるんだ。
 気を遣わせたとか、そんなんじゃない、ただ、…こう、したくて」

君が好きだから、と。
肩口に顔をうずめて、小さく呟いてみる。

長谷部国重 「一緒に……、そうだな、…そうだった。
 俺も、出来ればお前と居たいと、…思って」

思っている、思っていた、
今も傍に居たい、離れたくはない

「一緒に居るだけで、碌な事はしないのに、
 其れでもお前と共に、…いたい」

刺して、絞めて、傷付けて、
危害を加えられた側の此奴が一番つらいだろうに
其れでもこうして、抱き締めてくれる腕が温かい。
何時でも踏み出せるように
動けるように足先へ籠めた力は抜けないけれど

「……もう、どうしたら良いのか、分からなくて
 何を消したら、お前と居られるのか、わからないんだ。」
「お前に、…光忠に想って貰えるのは、とても嬉しい
 本音だと言ってくれるのなら、猶更。」

力強く抱き締めてくる腕が嬉しくて、愛おしい。
腕を回す事は、出来なかった
力を抜く事も、怖かった。
手を回してまた、拒まれるなら
力をぬいてまた、拒絶されたら
何時でも離れられるように、していなければ。

「……お前が、したいようにしてくれ。
 俺は、お前がする事を拒まないから。」

好きだよ、と返す声ばかりを添わせて
抱き締められる儘、立尽した。

長船光忠 「そう、か。
 …同じだね、僕も、君と一緒に居たいよ」

まだ、一緒に居たいと思ってくれているのだと知って、
なんだか、どうしようもなく安堵に力が抜けて。
妙に強張るようにも感じられた腕の中の身体を、
子供をあやすような手つきで、背に回した腕で繰り返し叩いた。

抱きしめ返してくれる腕がないのなら、そのぶん、
ぎゅうと体温が、早い鼓動が伝わるほど、抱き寄せてしまえばいい。

「そのままでいいよ。…ううん、そのままでいてよ。
 何も消さなくたって、君のどんな思いも丸ごと全部、好きだから」

全部伝えた通りだから、と笑ってみせて、それから。
少しだけ身体を離して、腕の中の長谷部くんの頬に手を、添えて。

「…本当に、信じてくれるの?」

長谷部国重 あやすように、宥める様に
柔く、しかし確りと背を叩く掌に
全ての力を抜いて委ねて仕舞いたくなる。

思考と感情の袋小路へ直ぐに這入り込む俺に
声で、掌で、引き戻してくれるような存在にずっと、甘えている。

「……お前の、意に沿わない事ばかりだろう。
 そうでなければ、嫌がられる事だってない。」

結局、己が辛いだけだ。
つらさを自覚してしまって、余計
余計に余分な、つらいだけのものになって、しまいそうで。

「全てを、… 全てを信じる事は、難しいかもしれないが、
 ……少なくとも、お前がする事は、」

信じたい、と続けかけて
嗚呼、と思い出して仕舞うつい先程の遣り取り
言葉は怖いから行動でと、強請って仕舞った其れを思い出して
改めて自己嫌悪に吐きそうになる。

「いや、… 信じる、ように、…する」

体がまた無意識に強張って 頬へ手を受けて薄く身が竦む
この手に委ねてしまいたい欲を、捻じ伏せる事に必死になる。

情けなく眉尻を下げた儘、
ぎこちなく笑みを敷いた

「……待てというなら、今度こそ。」

長船光忠 「君にされることで、嫌なこと、なんて何もないよ。
 何をされるより、信じてもらえないことだけが嫌、で……、
 …、それは僕も同罪か」

僕だって、君を疑って、同じ痛みを覚えさせた。
随分ひどいことをしたのだと、どうしていつも気が付くのは、すべて言ってしまってからなんだろう。
ごめん、と今更小さく呟いても、遅いというのに。

信じる、とその言葉を聞いて、どうしてだか、鼻の奥がツンと痛んで、
だめだ、と思いはしたものの、長谷部くんの頬に涙を、落としてしまった。
……君に、そんな顔をさせたいわけじゃないのに、
どうしていつも、僕は。

「……僕も、信じる、から、」

決意のように呟いて、そのくせひどく臆病に、
すこし強張った唇に、ちいさく口付けを落とした。

長谷部国重 「……信じるよ、お前の云う事も、する事も」

深い呼吸を一つして
どんどん傷付いてゆく顔を漸く、見る事が出来た。
謝罪の言葉に、小さく首を横に振って
痛そうな顔で涙を流す様子に、ああとまた眉尻が下がる

「俺は、…如何、だろうな。
 俺の何を、そんなに信じられるのか、俺自身わからない」

確かに想っているのに
何度も愛しい人にこの手で、この心で苦しみを与えて
猜疑と臆病を重ねて、こうして哀しませてまでいる

与えられた淡い口付けに目を細めて
浅く落としたわらいは何処からの物だったのか

「したいようにしてくれとは言ったが、
 無理にしてほしいと言う訳じゃあ、無いからな」

思いを疑う訳じゃない、とは添えて
腕の中で、無意識に抜けかけていた力を自覚して、
己の足で立ち直す。

長船光忠 「君はずっと言ってくれてただろう、大事だとか、好きだとか。
 僕のことを大切に思ってくれていること、伝わっていたから、
 …君が信じられなくても、僕が信じているから、それでいいんだ」

君が傷付ける手だと何度言おうとも、
僕にとっては抱きしめてくれた、撫でてくれた、
ときに救って、導いてくれた、暖かい手だ。

濡らしてしまった痩せた頬を、指先でぐい、と拭って、
ずいぶんと久しぶりに目が合ったような気がして、返すように目を細めた。

「君の望むことだって、君がさせているんじゃない。
 ただ、僕がそうしたいからするだけだ。
 ……疑うんじゃないって言うなら、覚えていて」

君の望みに応えたい、それすら僕のしたいことなんだって、
ずっと言えずにいたことを、静かな声で、それでも届いてほしくて、懸命に告げた。

長谷部国重 「……俺が、俺の事を一番、信じられないだけだ。」

大事で、愛おしくて、何よりも大切な唯一人。
触れて撫でて慈しむ事なら幾らでもしたいのに
己の望みと願いとは裏腹に殺めかけてばかりで

頬を濡らした涙のひとしずくさえ
拭われる事が惜しくなる程
全てを愛おしいと思っているのに

「光忠が、俺を想ってくれての事であるなら、
 俺はなんだって嬉しい。其れがどんな事だろうが。」

嬉しい事は、本当なのだと眼を細め
望みにこたえたいと、そう思われる事も。

「ただ、…俺が、分からなくなるだけで。
 だったら、…全てを信じて仕舞えば、良かったんだな」

愛おしい人の想いも、願いも。
何の猜疑も挟むことなく、只。
期待を抱く事だけをやめて。
 
「難しいかもしれないが、… 努力、する」

長船光忠 「…いいんだ、君が僕のこと信じられないなら、
 僕はいつでも、君に信じてもらえるように、考えるから」

今はきっと、信じあえるように、共に生きられるように、
そう、考えることしかできない。
だから、そんなにひとりで頑張らなくていいよ、と笑って、
涙を拭って少し湿った頬を、指で宥めるようにすりすりと撫でて。

「好きだよ、長谷部くん。
 ……君と居たいから、…君と、生きたいから。
 まだもう少し、僕のそばに、居てほしい」

唇を寄せて、ただ愛しいと、そんな気持ちだけで頬に触れさせた。

長谷部国重 「……もっと、単純に信じあえたら良いのにな。」

俺が信じると告げた言葉も
僕も信じると告げられた言葉も

想いだけが本当なのに
余分な物が多過ぎた

濡れた頬を指腹が撫ぜる感触が心地良くて
先程よりは幾分自然に笑みを敷いた

「好きだよ、
 ……一緒に居たい、…お前と共に暮らしたかった。
 離れる事も、放す事も、…もう暫くは無理そうだ。」

親愛のキスを頬へ受けて
強張るばかりの体から、漸く力を抜く。

「……中へ戻ろうか、… 一緒に」

長船光忠 本当にね、と情けなく自嘲を浮かべながら、
けれど少し、触れた頬の強張りは解けたように思えて、安堵の息をつく。

「一緒に暮らそう。
 君ともっと、一緒に居られる時間が欲しいよ」

もう一体、何度目だか分からないようなセリフにまた笑う。
それから一緒に、の言葉に、こくりと小さく頷いて、
結局、抱き返してはくれなかった手をそっと握る。

長谷部国重 「そうだな、…俺が、
 もう少しだけ、大丈夫になったら。
 俺も、お前と……いられる時間が、欲しい。」

傷付けたり、
欲しがったり、してしまうだろうからと
相変わらず己に対する信用は薄くて、苦くわらう。

手を握られて、一瞬指が強張るも
ぎこちなく握り返して、歩き出す。

KP じゃあここでいいかな!
手水舎で水を飲んで互いに思いを伝えあったことによりSAN1d2回復、振ってどうぞ!

長船光忠 1d2 SAN回復
Cthulhu : (1D2) > 2

system [ 長船光忠 ] SAN : 54 → 56

長谷部国重 1d2
Cthulhu : (1D2) > 1

system [ 長谷部国重 ] SAN : 53 → 54

KP よしよし、光忠も初期SAN超えたな
長谷部くんさっきから1ばっかり出してるねえ…?

長谷部国重 そうだな、まあ…回復はしているし黒字だ。

KP まあだいぶ増えてるようだからね、よかったよかった
さて、それでは旅館の中に戻るということでいいかな。
廊下には松の間、竹の間、と並んでその一番奥に君たちの泊まる部屋、梅の間となっている。
何かしたいことはあるのかな?

長谷部国重 他の部屋は…流石に這入る訳にいかないだろう。
他に行ける場所はあるか?

KP そうだねえ、では、君たちの足元のあたりから、お客様!と声が聞こえる。
そちらを見ると、まるで従業員ですと言わんばかりの動きやすそうな和服を着たハチワレの猫が二本足で立っていた。

長谷部国重 猫。
体長も、猫のサイズか…?

従業員 「お客様、お湯のご用意ができておりますにゃ!
 大浴場に浴衣のご準備もありますので、ぜひごゆっくりにゃ!」

KP そうだね!立ち上がっても膝くらいまでしかないね。
ということで、猫が喋るのに驚いたあなたたちはSAN値チェック0/1です。

長船光忠 CCB<=56 SANチェック
Cthulhu : (1D100<=56) > 38 > 成功

長谷部国重 CCB<=54【SAN値チェック】
Cthulhu : (1D100<=54) > 12 > 成功

KP お、強い強い

長谷部国重 まあ、こんな、事も、ある……のか……?
「……調べてみたいな」

従業員 「何か気になることがございましたかにゃ?」

長谷部国重 しゃがみ込んで、二足歩行の其れと目線を近しくさせよう。

「……生体か?
 何故二足歩行をしているんだ。骨格的にも四足歩行が楽だろう。
 猫に模しただけなのか、それとも
 猫が何らかの力を得て人の真似事か?」

知識欲求の後遺症もあって、観察に近い視線を浴びせながら問い掛けたい。

従業員 「にゃ、にゃにゃ……?そ、そう聞かれましてもにゃ……」

長船光忠 「は、長谷部くん、あんまり困らせちゃダメだよ」

長谷部国重 「困らせる心算はないんだが、…気になってな。
 まあ、俺の夢というなら、
 …否、俺の夢であるなら却って不可思議なんだが。
 二足歩行の猫というモチーフを何処かで見たんだろうか……?」

「すまなかったな、仕事があるだろうに」

光忠の言葉を受けて、ハチワレを解放しよう。

従業員 「いえいえ、こちらこそお客様を驚かせてしまったようで申し訳ありませんにゃ。
 さ、お湯のご用意ができておりますから、どうぞごゆっくりにゃ!」

長谷部国重 歩いて戻ってゆく姿を見て、
四足歩行の方が楽だろうに、など漏らしつつ少々不安そうに見送った。

「……湯の支度が出来ているそうだ。行ってくるか?」

姿が見えなくなってから、光忠を見遣る。

長船光忠 すたすたと普通に歩いているから不思議ではあるけど、
…なるほど、長谷部くんは独特の視点を持ってるなと頷きつつ。

「そうだね…ちょっと気になるし、行ってみようか」

長谷部国重 「ああ、先に入ってくると良い。
 一度部屋に戻る…必要はないか、そも、旅支度の覚えもないしな…」

長船光忠 「え、一緒に……ってつもりだったんだけど。
 長谷部くんは行かないの?」

長谷部国重 「……一緒に、入りたいのか?」

長船光忠 「え、……折角なら、一緒に行きたいなって」

長谷部国重 「……わかった、じゃあ、行こうか」

長船光忠 「ふふ、やった、ありがとう!」

KP それじゃあ温泉に向かうってことでいいかな?

長谷部国重 そうだな、…移動しよう。

KP はーい、了解!
脱衣所には、二人分の浴衣と男女で別れていない露天風呂への入り口がありました。
掃除道具置き場、と書かれた扉がその横に置かれていますが、扉はぴっちりと閉じられていました。

さて、あなたは露天風呂の入り口の暖簾をよく見てみます。どう見ても混浴のようです。猫が言っていたように、暖簾の向こうのガラス戸の奥、うっすら緑に色づいた体に良さそうな薬湯が揺れる小さな露天風呂はとても暖かそうで、湯加減が良さそうでした。

長谷部国重 タオルだの洗面用具類は備え付けが在るんだろうか。

長船光忠 「そんなに大きくないけど、いい雰囲気の場所だね。
 あ、浴衣もちゃんとある」

KP そうだね!その辺の棚に使ってよさそうなものが置いてあるんじゃないかな

長谷部国重 そうか、ではタオル等の用意はしておこう。

「先程の猫…?、が支度を整えたのかもな。」

長船光忠 「そうみたいだね。かわいい猫くんだったねえ…」
長谷部くんが用意を整えているのを見て、僕もそれに倣いつついそいそと服を脱いで早速入る準備をしようか。
「お客さんも他にいないみたいだし、まるで貸し切りだね。
 ゆっくりできそうでよかった」

長谷部国重 なるべく、視線を向けないようにして
己も服を脱ぎ、脱衣籠へ入れていく
湯上りには浴衣を着れるように籠の上へタオルと置いて。

「そうだな、…つい長湯をしてしまいそうだ」

此奴本当にこういう時何ともないなと
顔を覆って溜息をつきたい心地だ。
なるべく意識しないように努めながら、湯殿の扉を開けよう。

KP はいはい!
風呂は露天風呂があるのみだね。
薬湯に対しては薬学と目星がそれぞれ振れるよ。

長谷部国重 折角だ、薬学振ってみるか。
CCB<=61【薬学】
Cthulhu : (1D100<=61) > 72 > 失敗

KP 残念…

長谷部国重 ん、残念だったな。
目星も良いんだったか?

KP どうぞどうぞ!

長谷部国重 CCB<=82【目星】
Cthulhu : (1D100<=82) > 27 > 成功
此方は何とかなったな

KP お、余裕の値だね
では、露天風呂には緑色に薄っすらと透けた湯が揺れている
。水の中は透き通っていて何の淀みもないあたたかそうな湯である事が分かる。
近づくとほんの少し草のような香りもするだろう。

長谷部国重 薬湯だしな、…先に軽く体を洗ってから入ろう。

KP なるほどなるほど
ではもう一回目星を振ってもらおうかな

長谷部国重 CCB<=82【目星】
Cthulhu : (1D100<=82) > 34 > 成功

KP お、いいねいいね
では、身体を洗おうとして手に取った洗面器の底に、こんなことが書かれているのを見つける。
『洗ってあげたら、ご機嫌玉手箱』

長谷部国重 「……玉手箱……?」
怪訝そうに一部を口に出す

長船光忠 「たまてばこ…が、どうしたの?」
僕も洗面器に手を伸ばしつつ聞こうか
CCB<=67 目星
Cthulhu : (1D100<=67) > 1 > 決定的成功/スペシャル
www

長谷部国重 www
こんな所で…w

長船光忠 「洗ってあげたら、か。
 そうだ、折角だしさ、背中流してあげるよ」

KP まあそう言わずww

長谷部国重 「……玉手箱ってなんだろうな」

俺は良い、と断り掛けて
先程の遣り取りを思い出して言葉に詰まる。

「……適当で、いい。」

長船光忠 「なんだろうね?あんまりいいイメージはないけど…でも、ご機嫌って書いてるし、分からないね……」

気まずそうな顔してるんを知りつつ、気付かないふりでタオルを構えてその辺に座ってもらおうか。

「何言ってるの、しっかり流させてもらうからね!ほら、座って座って」

長谷部国重 「あれだろう、…御伽噺の、開けると年を取った箱だったか。」

うろ、と視線を彷徨わせて、
風呂椅子を適当に選んで、鏡の前に腰を下ろす。

長船光忠 「そうそう。だから、良いものとは限らないよねえ。
 ほら、お湯かけるよ」

タオルを石鹸で泡塗れにして、ざばーっとお湯を背中に流してから力を込めて背中をしっかりこすってあげよう。
細いなあと思っていたけども、ちゃんと広い男の人の背中なんだなあと思いながら、
たまに指先で浮き出た骨のあたりをつい、となぞってみたりしつつ。

「なかなか一緒にお風呂なんかはいらないから、初めてだね、こういうのも」

長谷部国重 「ん、……何があるか分らん場所でもあるしな」

夢なのか現なのか其れとも。
今まで散々不可思議に足を踏み入れた事を考えると
まるきり何処とも判断出来ない儘でいる。

色々と思考を巡らせる事で、如何にか
意識を分散させようと思っているところに
指先が、骨の稜線を辿る動きに大袈裟に身が竦む

「……擽、たい。」

視線を向けない儘、小さい抗議の声を零し。
普段共に風呂に入る事など、
幾度宿泊を重ねても無かった事で
如何したって意識をしてしまう。

「も、う…良いだろう、流すぞ」

長船光忠 「ごめんごめん、綺麗な肌してるなって思ってさ」

びくりと身体を揺らすものだから思わずびっくりしてしまって、指先で触れたところは宥めるように手のひらで撫でておこう。

お湯かけるよ、と一声かけてから背中についた泡を流して、
それから長谷部くんの肩越しに顔を覗き込もう。

「ね、長谷部くん、折角だし僕も洗ってよ」

長谷部国重 幾度かゆっくりと呼吸を繰り返して、
手が、指が、掌が触れるだけで
こんなに落ち着かない、なんて

湯を掛けられ、其の温度にゆっくりを息を吐いて
気も力も抜きかけたところに、覗きこまれた顔に
今度は薄くではあるが肩が跳ねた。

申し出に一度目を閉じて、嘆息一つ。
本当に、己ばかりが。

「……分かった、じゃあ、今度はお前が座ってくれ」
 
己が持ち込んだタオルを茹で濡らして絞ってから
風呂椅子から腰を上げて位置の交代をしようと。

長船光忠 困ったような反応はしつつ、断らないんだなあ、なんて思いつつ、言われた通りに場所を代わって貰って椅子に腰を下ろそう。
嫌がられても文句は言えないよなと思っていたので、正直少し驚きつつも、ついつい笑みが零れてしまうだろうな。

「ん、じゃあお願いしようかな」

長谷部国重 背の後ろ、浴場の床に膝を突く姿勢で座り、
備え付けのボディソープをタオルに垂らして泡立てる。

白皙の、己よりも少し広い背中。
傷めないよう、痛みを与えないように
先程洗って貰った力加減よりも幾分柔く、
泡だらけのタオルを滑らせてゆく。

「痛く、ないか?」

其れでも、時折確認をしてしまう。

長船光忠 くすぐったいくらい優しい手つきと、心配げな言葉に嬉しくなってしまって、ついつい笑ってしまいながらされるがままにされていよう。

「大丈夫だいじょうぶ、もっと強くしてもいいんだよ。
 長谷部くんは優しいよねえ。そういうとこ、僕は好きだな」

長谷部国重 「痛みは、本人にしか分からないだろう。
 お前、ただでさえ膚が白いからすぐ赤くなるし」

日焼けだの引掻き傷だのと
己の其れよりも目立つ印象があると
言い訳染みて紡ぎながらなんとか洗い終えては

「湯を流すぞ、」

そう一声かけてから桶に湯を少し温めに注いで
背へ流して行く。

長船光忠 「まあお酒でもなんでも、赤くはなりやすいけどねえ、そんな繊細なわけじゃないよ」

そうとは言いつつ、心配させるくらいなら気をつけようか、とは思ったりもして。
流して綺麗にしてもらったら、一度振り返って、
ありがとう、気持ち良かったよ、と笑いかけようか。

長谷部国重 「頭で知れていても、ついな。
 ……其れなら良かった。」

振り向いて笑う顔に視線を合わせられなくて
少し離れた箇所へ風呂椅子を持って座っては
残りの体を、やや雑にでも手早く洗って仕舞おうと。

長船光忠 気まずげに視線を逸らされて逃げるように遠ざかってくものだから、
少し可哀想なことをしてしまったかな、とか思いつつ、
特に問うことはせずにそのままその場所で身体を流そうか。
慌ただしくすることもないから、湯船に向かうのは長谷部くんが浸かってからになるだろうな。

長谷部国重 雑に体を洗って流して、少し迷ってから洗髪も済ませ
幾分気を落ち着かせようと少し低めの温度で流す
濡れたタオルを固く絞って、洗い場を始末してから露天風呂へ移動する。

薬湯の独特な匂いと湯気
掛け湯を行ってから体を湯へ沈めて力を抜き
湯船の縁に腕を乗せ、ややぐたりと頭を乗せる姿勢で浸かる。

長船光忠 普段の洗顔フォームも何も手元にないから頬に手を当てて、少し肌とかヒゲの具合を気にしつつ、
まあ一通り洗ったら切り上げて、長谷部くんがいくらか温まった頃合いで僕も湯船に浸かろうか。

少し気の抜けた様子で頭を風呂の縁に預けた濡れた頭をひと撫でしてから、人ひとり分くらいを広めに開けて隣に腰を下ろそうか。
はあ、と思わずため息をこぼしつつ。

「気持ちいいね。ちゃんと暖まってる?」

長谷部国重 湯を張って浸かる事は日頃から余り無く
ましてや夏の時期となれば猶更

稀に湯を張り入ると大体湯の中で眠って仕舞うのを
今更思い出したのは、目蓋がとろと下がりつつある、故
嗚呼、これは気絶と同じなんだよなあと
知識としては有るが如何にも抗えない

ぺたりと濡れた跫と、水音、
そして頭蓋に触れる手の感触を受けて、瞬時に意識を戻す
顔を上げ、腕を外して両手で湯を掬い

「……寝そうになっていた」

ぱしゃりと顔へ湯を浴びせ洗って
ゆると息を吐く。

長船光忠 「気を付けないと、溺れちゃうじゃないか。
 まあ眠くなってしまうからね、気持ちは分かるけど。
 …近頃は忙しいみたいだけど、ちゃんと眠れてるかい?」

さして残業もない僕と違って仕事が遅くまで続くこともあるようだし、お疲れなのかな、と湯で濡らされた顔を見つつ思うだろうな。
濡れて張り付いた前髪に手を伸ばして、指先で耳に掛けてみたりしつつ、もう一度頭を撫でてから手を離そう。

長谷部国重 「湯船を張ると大体、こうなるんだよな……
 気が抜けてしまうんだろうか」

伸ばされる手に薄く強張るが、その場から逃げる事は抑え
耳朶に指先が触れる感触に肩を揺らす

湯の中にあった手を出して、
濡れた前髪を搔き上げて後ろへ流し

「……昔から寝つきの良い方じゃあないが、
 多分眠れている、とは思う。…お前は如何なんだ?」

薬湯であるなら、いっそ濁っていてくれれば良かった。
視線を逸らしながら湯船の壁へと背を預ける。

長船光忠 「そう、それならよかった。
 …少し無理をしてるんじゃないかって、気になってたから。
 僕なら大丈夫だよ」

指先が触れたことに少し緊張するように身体を固くしたのを見て、あまり触れてはまずかったかな、と思いながら手を引いた。
それから濡れた髪を書き上げる手つきを見ていたけど、視線が逃げたのを見てこちらも足先に視線を投げてしまう。
ちゃぷちゃぷ、と湯が揺れる音を聞きながら少しの沈黙を挟んで、どう聞くべきかとやや悩みながら口を開こう。

「あー、……聞いていいのか分からないけど、さ、
 ……長谷部くんは僕と居て、いい加減しんどいなって思ったり、しない?」

長谷部国重 「無理、なァ
 ……何日も徹夜が続いたり、なんて事態は早々ないから
 寧ろ今は余り逼迫していない方だと思うぞ」

欠員だの機器類の彼是による突発的なトラブルは兎も角
現状であれば然程、と職場の状況を思い浮かばせて。

露天は外気へ触れる為か湯温が内風呂と比べてやや高く感じる
腕を出して先程のように湯船の縁へと乗せ
紡がれた言葉に思わず外していたばかりの視線を向けた

数秒ばかり言葉を探す間をひらいて
ああと視線を湯の中へ落とす

「……お前のせいで、そう思った事は無い。
 だが、… そうだな、…俺の態度が、悪いな。
 気詰まりにさせてすまない、為るべく気を付ける。」

長船光忠 「まあ、そうだろうけどさ、夜遅くまで続くことも多いからさ、どうしても心配になって。
 君が元気にやってるなら、それでいいんだけど」

集中してひとつのことに打ち込めるようだから、
長谷部くんには向いているのだろうな、なんて思いつつ。
僕だったら、逼迫していないらしい今の状況でも、忙しさにすぐに音を上げてしまいそうだな。

僕の言葉にふい、と視線が向けられて、
それから申し訳なさげに眉が下げられるのを見て、堪らずに手を伸ばそうとして、けれど途中でパシャリと湯の中に落として諦めた。

「君が謝ることじゃないよ、僕の方こそ、変なことを聞いてごめん。
 ……最近、君がつらそうに笑ってるなって、そんなことが増えたから、さ」

「文句とかあったら、何でも言っていいんだよ。
 今更怒りはしないし、僕だって、悪いところがあるなら直したいし」

たとえば、触れられるのがつらいとか、と控えめに声にして、ふふ、と苦し紛れに笑ってみる。

長谷部国重 伸ばされかけた手が湯に沈むのを見て、
ああ、俺が逃げるからだなと、理解は及ぶのに

「…そんなに、変な顔をしていたか?
 お前が謝るような事はないぞ、…文句なんかも、無い。
 悪い所で直して欲しい所なんかもないから、
 その辺りについては本当に、悩まないでくれ。」

相手が悪い事なんて、何もない。
いつだって正しい事を言われている。

小さく落とされて、湯殿に淡く響いた声には、
視線を揺らした後に、否、と短く落とし
聞こえる笑い声が如何にも、哀し気で胸が軋む。

「……光忠が触れてくる事を嫌と思った事は、無いんだ。
 驚いたり、……過剰に反応してしまうのは、申し訳ないが」

相手が悪い事なんて、何もない。
己が抱いた彼是が問題であるだけで。

長船光忠 「変な顔って訳ではないんだけど。
 君は何でも我慢してしまいがちだから、
 僕のせいでいろんなこと、我慢させてやしないかなって思ってしまって。

 何だって言っていいんだよ、あれしてほしいとか、これはやめろとか」

文句や要望なんて、いくらでも思いつくだろうに、
でもそれを思いつきもしないで自分のせいにしてしまうから、
そんな顔をさせてしまうのだろうなと思ったりもして。

君は優しいからなあ、と笑って、それならば、と今度こそ手を伸ばした。
わざと少し雑な手つきで、濡れた髪をくしゃくしゃと乱して、
そのくせ、嫌じゃないならよかった、と小さくこぼした言葉は少しばかり震えてしまった。

長谷部国重 「そんなに、要望を口に出さないでいる心算もないんだが…
 例えば飯を作って貰う時だって、彼是要望は口に出してるだろ。
 ……一緒に居て欲しいとも、…気持ちも、
 結局我慢出来ている物なんて、余り無いと思うが」

我慢できずに欲しがってしまって
そうしてしくじって、今に至るのだから。

身を反転させ、湯船の縁に結局両腕とも乗せて
持ち込んだタオルで一度顔を拭った
己では見えぬ分、何処まで滲んでしまっているのか。

「優しいのは、俺じゃなくてお前だろう、
 仕方なくではなく付き合っているというなら、猶更。」

雑に撫でる手に目を細め
落とされる声の震えにまた、少しだけ眉尻を下げ

「嫌じゃあ、ない。…俺は、…
 俺はお前が好きだって、言っただろう。
 好きな奴にそうされて、厭とは思わないさ」

長船光忠 「それもそうか。
 ……いろんなこと口にしてくれるのが、当たり前なんて思っちゃいけないね。
 たくさん伝えてくれて、教えてくれて、ありがとう」

我慢しないで、なんて優しいフリをしながら甘えているに過ぎない言葉だ。
嬉しいよ、と小さく添えて笑ってみせて。

「うん。好きだって、たくさん言ってくれてるよね。
 でも、だからこそ、……好かれてるの分かってて、そこに付けこむようなことはしたくないじゃないか」

細められた目元を指先でくすぐりながら、くしゃくしゃになった頭はそのままに手を離す。
僕がヤな男になってたらいつでも言ってね、とは冗談めかして笑って、
けども十分、長谷部くんの好意に付け込んでいる自覚はあったから。

長谷部国重 「要望、という点では…
 俺よりもお前の方が、口に出して言わないように思うが。
 改めて意識すると判らなくなるもの、なのかもな」

礼を言われるような事でもない、と小さく笑って
続く言葉を受けては視線を其方へ向けてから、
思案に目蓋を伏せる

「……俺はお前の優しさに付込んでばかりな気がするけどな。
 お前だって、俺にそうなってしまえば良いんだ。」

目許を撫でる濡れた指先に、心地良さそうに一度眼を閉じるが
離れて往く感触には其れを開いて一瞬だけ目で追った
濡れ髪が彼方此方と跳ねているが其れを整える事もせず
またとろ、と目蓋が重くなる

「お前は、でも、しないよな。筋を通そうと、するだろ。
 ……酷い男にはなれても、厭な男には、ならない」

長船光忠 そうかなあ、と呟いて考えてみるけれど、確かにそうなのかもしれない。
かといって要望や文句、と言われて簡単に思いつくものでもなく。
長谷部くんてすごいねえ、と傍から聞いていれば脈絡のない言葉だけ漏らしてへらりと笑った。

「優しくするのは、君が好きだからだし、
 それで甘えられたところで、それを付け込まれたなんて思わないよ。
 …なにそれ、僕に付け込まれたいの?」

酷い男か、たしかに今の僕はそうなのかもしれないな、なんてちょっと歪んだ笑みが浮かぶ。
視線が指の先を追うのを、なんだかどうしようもなく愛おしく思ってしまって、
寝ちゃだめだよ、とひと声だけ掛けて、ぽん、と名残惜しく軽く頭を叩いて。

「正しいと思ったことは貫きたいけど、
 でもそれで、君を苦しめたいとは思わないんだよ。……これでも、ほんとうに」

長谷部国重 長谷部君は、なんて
紡がれた言葉にはつと瞬いて、首を傾いだ。

「そうだな、…お前が、俺の何かに付込もうとするなら
 俺は結局赦す気がする。
 ん、… そうだな、寝たら、まずい」

ぽん、と柔く撫ぜられた頭を軽く振って
それでも、心地良い湯船と、光忠の声を未だ手放し難く
湯船の縁に腰掛けて、上半身を外気へ晒す姿勢に変える。
持ち込んだタオルを広げて腰へ被せ、足先だけを湯に浸けて。

「お前が、貫きたいことを止める権利なんてないからな、
 ……正しい事に苦しむなら、其れは間違っているって事だろう」

長船光忠 そういうとこだよなあ、と少し笑って独り言つように言う。
たぶん本当に何でも受け入れてしまうのは、長谷部くんの方なんだろうなと思ったりもして、それはさすがに口にしないけれど。
そろそろ上せさせてはまずいなと思いつつも、話すことは尽きそうにない。

「そう、かなあ。そうとは思わないけど…。
 ……前に、アキラ君にさ、どうして嘘をつくのか、って聞かれたことあるだろう。
 なんて答えたか、君、覚えてるかい」

長谷部国重 湯に染まった膚が外気に触れるのが心地良い。
漸く髪に指を入れ適当に後ろへ搔き上げて撫でつける。

アキラ、の名に一瞬視線を湯の中へ落とすも、
記憶を探る胸中は、意外なほどに穏やかだった

「利己心からの嘘ばかりではない、だったか?
 嘘も方便だとか、
 …あの時は、随分考えながら回答していたように思うな。」

「光忠は… あまり細かく覚えている訳じゃあ、ないが
 誰かのための、優しい嘘……そう言っていたんだったか、確か」

長船光忠 今でも、あの時に買った子供用のお皿や服を、君は捨てられないまま大切にとってあることは知っている。
けれども静かな声に変わりはなく、珍しく斜め下から表情を見上げながら、その言葉を聞いていた。

「長谷部くん、困らされながら一生懸命答えてたもんねえ」

質問を浴びせられて、そのひとつひとつに真剣に答えていた姿を思い出して、くす、と思わず笑ってしまったりして。
思わずひとつだけ咳払いをして、誤魔化しきれないと分かりつつも誤魔化した。

「……優しい嘘、は君が言ったんだよ。
 すいぶん印象的だったから、覚えてる」

「嘘は間違ったことかもしれないけど、優しい嘘が間違いか、正しいか、なんて、誰にも決められないと思うんだ。
 ……独りよがりの正しさで君を傷つけるくらいなら、僕はいらないな」

長谷部国重 「本当に…、俺は人に物を教える事が不得手だと思い知った、
 ――素直に飲み込む物だから、…」

過日の幼い顔と、もう一つ思い出す顔を払拭するように
首を横に振って、一つ長い息を吐く。

笑う気配に視線を其方へ向けて眉尻を下げた。

「お前も同じような事言ってたように思うけどな、
 ……傷付けるからといって、
 信念や心を捻じ曲げて添ったとしても、其奴が苦しむだけだ。」

正しいと信じて其れを貫くのであれば
其れを曲げる事は、きっと本意ではないのだろう

「憐れみで、本意を曲げると後で悔いるんじゃないか?」

長船光忠 「長谷部くん、教えるの向いてると思ったけどね。
 僕は難しいことは適当にごまかしてしまったから」

難しい言葉でもなんでも、噛み砕いて一生懸命説明しようとしていた姿が、僕にとっては充分尊敬に値する姿だったわけだ。
ふ、と笑っていたら目線があってしまって、思わずそのまま、にっ、と目を細めて笑いかけてみる。

「正しさはひとつきりってことじゃないってことだよ。
 …憐れみなんかじゃなくて、きっと優しい嘘が誰かにとって正しいように、僕の正しさと君の正しさは違うんだから。
 僕の押し付けるものを、君が苦しんでまで受け入れる必要なんかないってこと」

長谷部国重 「教えるなら、正しいとされている物を教えてやりたいだろう。
 俺の私見など、入れる必要は無いのだし。
 ただ、其れだけなら辞書を差し出せば済む話でもあるからな」

受け売りだろうが何だろうが、
一般的に正しいとされている物を入れておかないと
後々で苦労するだろうし、とは独白めいた響で落ちた。

視線が合った先で金色が細くなるのを見て、ふと口許を緩ませる。

「……ならば、どの正しさに沿いたいか、じゃないか。
 少なくとも、俺はお前の正しさを尊重したいし、
 是が正しいから迎合しろと言えるほどの物を、
 俺は持ち合わせている訳じゃあ、ないしな。」

羞じる物ばかり、持っている自分が
何を正しい物として人に差し出せるのだろう。

迷いなく標榜し、是だよと言える相手を前に、など猶更だ。

「……それとも、
 いけないこと、と判じた上で添うてくれるのか」

落とし合わせた視線を其の侭、力無く笑った。

長船光忠 …けれども、あの子には、後々、なんて来なかったわけだ。
それでも僕らが彼のためを思ってしたことは、きっと無駄ではなかったと、そう思いたいのもまた、独りよがりなのかもしれないけれど。

「いけないこと、だとしても、それが君の信じることなら、……かな。
 君は賢いし、なんだかんだ、芯の強いところがあるからさ、
 君がそう言うのなら、きっとそれも間違いではない、って思うんだけどな」

なんて誘い文句を、と思いながらも、まんまと掛かるのは、他でもない、君だからだ。
情けない笑みをこちらに向けられて、ふやけかかった手を持ち上げて、頬に触れさせる。

長谷部国重 あの子にも、彼奴にも 案じた先の何もかも
教えた身の、この手で消したのだから笑えない話だ。

「お前、其れは …随分な買い被りだろう。
 芯の強さも、正しさだって…俺はもう何かわからないのに。」

少しだけ身を屈めるように背を丸めた
水面に反射して、互いの声が潜めたとて容易く届く

「そうも、正しい事と思いたがるなよ
 間違いじゃあないと思わないと、何も出来なくなるのは 
 解らないではないが
 
 いけないことだと、俺も判じたものだとしたら?」

俺が正しい物だと思って差し出す物ではなく
俺もいけない事と知った上でお前を見るなら

「そんなの駄目だ、って お前は言うのか?」

湯の温度を吸い取って熱い手が頬へ触れるのを
己からも押し当てるように少しだけ顔を寄せた

長船光忠 僅かに顔を寄せられて、潜めた声が響くのが、秘密の対話をしているような気分を煽る。
逃げ出したくなる視線を、それでも藤色から離せずにいるのは、その声を一つたりとも聞き逃したくないからで。

「残念だけどね、僕、君が思ってるよりも君のこと、好きなんだよ。
 ……君が差し出すものなら、君自身がいけないことだと認識していても、
 …僕だけはそれを正しいと、そう信じたくなるものなんじゃない、かな……」

誘う言葉に、懐いて頬擦りする仕草に、どうしようもなくそわついてしまう。
尻すぼみになりながら告げてしまえば、もう逃げることもできなくて。
しっかりとその表情を見つめているつもりで、けれどずいぶん情けない視線になってしまっているのだろう。

長谷部国重 「……間違っていない、正しいから大丈夫だって
 保険を掛けたがってるだけじゃあないのか?

 いけないことだって、思うのも、
 その上で手を伸ばすのもお前じゃあないなら、
 そもそも俺は、差し出したりはしない」

酷い言葉遊びでもあるだろう
正しさを信じたいと足掻く男に、
理性よりも別のところを擽るような

情けなく萎む声も、臆病を滲ませる視線も
俺の言葉で強制されないと告げた男が、
何を選んで何に手を伸ばすのか
ただ、眼を細めて見詰めていた。

長船光忠 「そう、なんだと思うよ。
 ……結局、正しいと思えないと、選べないんだよ。臆病なんだ。

 でも、その判断の理由を託すのは、君だからに他ならないんだって、
 …それ、だけ、分かってて」

君以外に同じことを聞かれようとも、きっときっぱりと笑って否定できるのだろうに。
君だけ、…君だけには、どうしても。

何かを見抜こうとするようにじいと見詰めてくる瞳を、半ば睨むように見つめながら、
そのくせ、僕が困るの見るの、そんな楽しいの、と負け惜しみのように絞り出した声で言ってしまう。

長谷部国重 「俺だから委ねてくれる其れを、
 厭いはしないし喜ばしいとも思う。

 俺だから託したのだろう、
 俺だから揺らぐんだろう?」

絞り出される声の苦しさに、視線に滲みだした険に、
見詰めていた双眸を力を抜く様に和らげて

「――けど俺は、其れが聞きたい訳じゃないんだよ、光忠」

其れとも、と
頬に触れる手が下ろされておらぬなら、押し付ける儘
眉尻をまた此方も情けなく下げて

「……言葉で、請わなきゃ 駄目か?」

過日、お前の心を決めて寄越せと請うたように
今度は、理性も思考も他所にしたお前の情動を、
こんなに、また浅ましい真似までして
こんなに、お前を苦しめてまで、して

寄せていた頬を僅かに離した。

長船光忠 言い聞かせるように湯煙に響いた音と、触れた手に甘えるような頬擦りに、
また、君に言わせてしまった、と後悔したってもう遅い。
言葉にしようと、しなかろうと、…きっともう、そう変わらないのに。

「……い、や」

「だめ、言っちゃ駄目だ、言わないで…!」

それでも、首をふるふると振って、半ば叫ぶような声音でそう縋りついて、
告げるだけ告げて離れていこうとした体温に、必死に腕を伸ばす。
首に引っ掛けるように両腕を掛けて、
ぐ、と強引にこちらに引き寄せさせようと力を込めて。

はせべくん、と泣きそうに小さく呟きながら、情けなく笑った顔ををじいと見つめ返して、
その唇をもう何も言えないように塞いでしまおうと、
首を伸ばして、食らいつくように唇を、近づけた。

長谷部国重 言わないで
そう、悲鳴染みて湯殿へ響いた声に何処かが酷く軋む

湯船の縁に腰掛けていた身を
伸ばされた腕も引き寄せの力にも抗わずに
湯の中へと滑り落とし、外気で少し冷えた身を委ね

ああ
結局なりふり構わず強請って請うて
そうして、漸く
そうでも、しないと

寄せられる顔の、悲愴な色をした眼を見ていられずに
そっと双眸を伏す。

「―――……」

長船光忠 分かっていたのに、
……分かっていたはずなのに。

強引に引き寄せようと、諦めたように素直に僕の腕に収まって、
静かに瞳を伏せた表情は、もう耐えきれないとでもいうように、
それでも必死に痛みをこらえようとするように、見えて。

きっとどれだけ傷つけたことかと、今更後悔したって遅いのに。
謝罪の言葉をこぼしそうになって、…けれどそれは、何とか堪えて、飲み込んだ。

「……、はせべ、くん、」

小さく名を呟いては薄く開いた唇を、色付いた唇を食むように寄せて、
ただ無言で、幾度も、幾度も、押し付けては離れ、角度を変えては、唇で柔く食み、
どうしようもなく拙くて、不器用な口付けだけを繰り返した。

長谷部国重 湯船の中に居るのに、熱は感じなかった。
何処も彼処もさむくて冷たい。

ギシギシと強張りそうな身体から
つとめて力を抜く

薄く名を呼ぶ声が哀しそうで
何かを酷く悔いているようで

呼び返そうと開いた唇は直ぐに閉ざした。

「……、 ……」


押し当てられて離れる口付け
幾度も繰り返される其れに、
如何したら良いのかも判らず

ああ、けれど
誘いをかけたのは、俺の方だ

迷って躊躇って、身動ぎも出来ぬでいた身を
ぎこちなく、少しだけ寄せ直して

顔をずらして、
口端に淡く触れるだけの口付けを一つ返してから顔を離す。

「……、ありがとう」

是以上、
無理をさせ続けるのは、耐え難くて。
ずっと辛そうな顔も見ていられず
眉尻を下げた儘視線を落としては

湯船の中に幾つも雫が落ちるのを
不可思議に思いながら眺めていた


「……のぼせるな。 …あがろうか。」

長船光忠 緊張したような身体が、それでも拒むこともせず、
……幾度触れさせようと、ひとつたりとも、何も伝わってはいないのだろうと、
そんな虚しさが、どうしようもなく胸を占める。

たどたどしく、返答のようにやっと長谷部くんから触れてくれたものは、
まるで、もういらない、と突き返されるようなものにすら、思えて。
酷く恐ろしく思いながら、それでも顔を上げれば、
ぱたぱたと、音もなく涙だけをこぼす君がいた。

…分かっていたはずなのに、どうして。

「……君にこんな思い、させたかったんじゃ、ない、のに、」

いまさらそんなことを言っても遅いことくらい自明で、
……それでも、首に回した腕はほどけないまま。

痛みを、きっとそれが痛みとも分からないで泣く君を、
全て自分の胸に預けさせようと、両腕で包み込むように、濡れた肌と肌とを触れ合わせるように、抱き寄せて。

長谷部国重 「……俺もだ。」

無理矢理に従わせたい訳でも
仕方なく触れさせたい訳でもなかった

何を言っても何をしても
結局俺では此奴の何にも響かないのだと
わかっていたくせに、みとめたくなくて

あれ程自身を羞じたのに
結局また繰り返した
結局全て自分が悪い

「すまなかった、… ありがとう」

其れでも、なんでも
こたえてくれたことは嬉しかった。

温度のある筈の湯の中で 
抱き寄せられる儘委ねた先の膚だけが近くて温い。
力を抜いて委ね切ることはかなわなくとも
愛おしさは溢れてやまないのだから、如何仕様も無い。

「……また、
 無理を強いた」

腕の中でうつろに零し
緩慢に身を離そうとして

長船光忠 「君が悪いんじゃない、君が謝ることじゃないんだ、」

君を不安にさせることしかできなくて、
欲をもって触れてほしいのだと分かっていても、
怖くて、拒むような言葉ばかりを、繰り返した。
……臆病な、僕のせいだ。

触れさせた手で、ぽつぽつと短い言葉だけをこぼす君の背中を、
ゆるゆると繰り返し、撫で下ろす。
そんな言葉で、謝罪ひとつで、今更何が変わるものじゃないとも知っている。
謝るくらいなら、もっと手を伸ばしていればよかったのだと、
分かっていて、できなかったと、今更悔いてもどうしようもないのに。

消えそうに、後悔を呟いた口ぶりに、
触れあった体温が離れていけば、今度こそ失ってしまうのではないかと、怖くて。
腕に触れさせた手は離さないまま、君の顔を見ることのできる距離に引き留めようとして。

「違う、ちがうよ、」

「…僕が不安に、させた、…ごめん……、」

長谷部国重 「……、俺の諦めが悪い、せいだ。」

宥める様に触れる慈愛の掌
いつだって此奴の手は温かくて、優しい。
いつだって。

身を退こうとして、
引き留める動きに、不思議な心地で視線を向けた。
ぼろぼろ、零れる雫はまだ止まらず
湯煙も相俟って視界が酷く滲んでいる。

「ちがう……?」

「お前があやまる、ことじゃない。
 お前に響くことなんて、 ないんだって
 わかっていたのに、……しっていた、のに
 諦められなかった、俺がわるい。」

「 …―――好きなんだ、まだ」

すまないと、心から思うのに
どうしてまだ、想いが消せないのか
自省も嫌悪もまだ足りないのだろうか

ほつほつ落とす言葉は明瞭さを欠いて
如何仕様も無い想いを吐露し肩が揺れた
そこで初めて、泣いている事を自認する

「すま、ない」

手の甲で乱雑に目許を拭う
嗚咽を零しそうな口許を掌で覆う
どうにか、どうにか止めなければ

長船光忠 大粒の雫がぼたぼたと零れ落ちて、頬を濡らして、湯船に滴っていくのを、
堪らない気持ちで見詰めていた。
……僕のせいで、こんな思いをさせてばかりだ。
いつも、僕の臆病の代償を被らされるのは、君ばかりで。

「君が諦めなくちゃいけないことなんかじゃないんだ、
 僕は、無理を強いられたわけじゃないし、、
 君が自分を責めなきゃいけない理由なんて、どこにもない」

泣きながら、堪えきれず零すような言葉に込められるのは、
僕が与えてしまった、自責の言葉ばかりで、
君のこと、こんなに苦しめて、痛めつけたくせに、
……それでも、好き、の一言に、まだ、鼓動が跳ねる自分が、嫌だった。

「…いいよ、泣いていいんだ、……大丈夫」

涙を拭おうとした手を、唇を隠そうとした手を、掴んで、止めて。
僕の前でくらい、子どものように泣きじゃくったっていいのだと、そう伝えたくて。
大丈夫だから、と小さく呟きながら目元に唇を寄せれば、
目尻の雫をそこに受け止めようと、舌先を伸ばして。

長谷部国重 泣くような資格なんて、何処にもないのに
溢れて零れて止まらぬ其れを如何にか仕様と
拭おうと、塞ごうとした手を止められて
途方に暮れた眼で其方を向いた

「ッ、とめ ないと」

止めないと、駄目だ
こんなもの、

尚も言葉を紡ごうとした口が戦慄いて止まる。
目尻に唇を受けて
ぼろぼろと零れ続ける雫を舐められて身が竦む

「やめ、 てくれ、
 だいじょうぶ、…だいじょうぶ、だから」

憐れみなのか自責に駆られてなのか
そんな事で、無理に触れなくて良いのだと
みっともなく嗚咽雑じりに訴えた声は
何処まで音になっていただろうか

何を信じれば良かったのだろう
軋んで寒くて眩々眩んで

「みつただ」

愛おしい事だけ確かなのに
触れ返すことこそおそろしくて
湯の中で、自分の手をかたく握り込んだ。

長船光忠 やめてくれ、大丈夫だから、と嗚咽に紛れて、固く強張った身体で拒まれて、
…今更、受け入れてもらえるわけもないかと、どこか納得にも近い心持だった。

それでも離れるのは名残惜しくて、
頬に愛しさだけを込めた口付けを落として、ようやく少し、身を離す。
君のことを考えていたつもりで、本当に傷つくのを恐れていたのは、自分ばかりで。
たどたどしく名を呼ばれて、どうしようもなく、息が詰まりそうだった。

固く握られた拳に、いつの日か、爪を食い込ませ、血を滲ませていたことを思い出して、
そっと湯の中から掬い上げて、両手で包み込む。

「怖がるばかりで、君の不安な気持ち、何一つ分かってあげられなくて。
 それなのに、信じて、なんて酷いこと言った。
 …最低だね、僕。ごめんね……」

ひどく、声が震える。
僕が泣いていいはずもないと分かっているから、強く唇を噛み締めた。

長谷部国重 酷く近しい場所にあった温もりが
湯の中で離れて、
拒んだ癖に寂寥とも安堵ともつかぬ息を吐く。

軋み続ける事も
何故だか酷く寒い事も、
抱く彼是全て耐え難くて
握り込んだ手を そっと掬われて

紡がれた言葉に只首を横に振る
眩、と亦、眩む心地

「不安、なんて …そんな、
 こんなの、…だすもの、じゃない」

現に、碌な事になっていないと
如何にか笑って仕舞おうとして、しくじって

泣きそうな顔を見て、
固まりそうだった手指をぎこちなく解き
指背でそっと蟀谷を撫ぜようと寄せ

「……しんじ、られなくて すまない、
 ずっと、信じてって、お前言ってたのにな……」

信じてと繰り返し言われていたのに
頷いて見せた癖に、つとめると誓ったのに
結局、
結局、手を伸ばしたんだ

力無く其の手も湯の中に落として。

「……のぼせそうだ、出よう」

部屋で、話す事は出来ればいいと
今の際になってまで、思ってしまう頭に小さく嗤った

長船光忠 不安なのだと、分かっていながら、…分かっているつもり、だっただけで。
下手くそな、笑顔にもなれない笑顔に、小さくかぶりを振った。

「いいんだよ、もう、信じてなんて、言わない。…言えないよ。
 信じてもらえない僕がいけないんだから、
 ……最初から、君に願うようなことじゃなかったんだ」

そう、最初から。
信じてもらえないのはすべて僕のせいなのだ。
僕が怖がるばかりで、僕が君をうまく愛せなくて。
君に縋って願うなんて、お門違いもいいところだったのだ。

ふやけそうな指先でそっと撫でられて、
場違いだって分かっているのに、触れられたことにどうしようもなく安堵してしまって、
目尻から滴りそうになったものは、俯いて、緩く頭を振って誤魔化した。

そうだね、と視線は合わせないまま、小さく返して、のろのろと腰を上げる。

長谷部国重 「……、泣かせるつもりは、無かったのに。
 すまない、… 俺のせいで、全部」

こんな痛そうに、
こんな辛そうに震える姿を
願っていた訳では、なかったのに。

「待ってと言われて待てなくて
 …信じて、と言われても出来なくて

 本当、… 出来損ないだ」

ほつりと水面を揺らす雫を見た。
合わぬ視線を強引に向かせる心算はなく
淡くひとりごちてから、
湯に沈めて仕舞っていたタオルを拾い上げ、湯船を出る。


立ち上がる瞬間に、視界が歪みそうな程
そんなに長々と浸かっていただろうか。

乾いたタオルで拭って 浴衣を着つけて
ぼんやりとした思考と視線も、幾分マシになっていただろう。

長船光忠 「君のせいだなんて、最初から一度も、思ったことなんかないよ」

呟いた音はあまりに途方に暮れるように聞こえる。
僕が不甲斐ないせいだって、何度も言っているはずなんだけどな。
小さく呟かれた、できそこない、の言葉にはどうしようもなく腹が立って、そんな訳、と叫びそうになったけど、逃げるように去っていく背中を見て言葉を飲み込んだ。
…そう思わせたのは自分なのだと、痛いほどわかっているから、今度は自分自身に対して憤慨してしまったりもして。

シャワーで軽く冷水を浴びてから、長谷部くんを追いかけて風呂を上がるよ。

KP さて、では脱衣所だ。
ふと見遣った視線の先で、今まで引っ張っても開かなかった掃除道具置き場の扉が少しだけ開いていることに気が付く。
それから脱衣所の籠が置いている棚に、傷をつけられたような跡を見つけるだろう。
よく見ると、何やら文字が書かれていた。

「眠る前の合言葉。『これはだれのゆめ』」

長谷部国重 浴衣を着付けて、ふと視線を向けた先
最初から開いていたか如何かは知れなかったが
開いているのが何となく気になって、
手を伸ばし、閉じようとする。

棚の傷には、猫の物だろうかと目を凝らし
その文言に、ああ、と力の無い声が落ちる。

「……そうか、そういえば」

全て俺の夢であれば、良いと。
不可思議な宿に、今更の事を思い出す。

KP 扉は閉じるんだね、了解。
それと背後から、光忠が声を掛けてくる。

長船光忠 「……長谷部くん。
 ほら、少しお水、飲んでおいた方がいいよ」

冷水が注がれた白いマグカップを持ってきて、それだけ声を掛ける。
近くの台にでも置いたら側から離れて、風の当たる場所で休んでいるよ。

長谷部国重 「……ああ、… 有難う。」

そういえば汗も涙もと
忙しなく水分を失うばかりだった
置かれたマグを見て手を伸ばし、中身を飲み干す。
冷たい水がキン、と響いて染み渡るようで緩く息を吐き。

離れた場所で身を休める姿を見て、
脱衣所の扉を見てと迷う間を挟み

マグカップを置いて、そっと先に脱衣所を出よう。

KP では水を飲み干すと、カップの底に「お戻りはお部屋から、あまいものはお口へ」と書かれているのを見つける。
光忠は君が出て行ったのを見るとがさがさと支度を整えて、それから間もなくして少し後ろを追いかけてくるんじゃないかな。

長谷部国重 色々な物に何かが書かれているな…玉手箱といい…

俺がいない方が良いだろうと脱衣所を出たが
支度をして出てくるようであれば、
足を止めて待つか。
此方へ近寄る気配がないなら、先に行こう。

此処から何処へ行ける?

長船光忠 少し頭を冷やしたかったから離れていたけど、君が出ていくならすぐ追いかけるよ。
扉を開けたところで待っていたことに驚くけど、ごめんね、お待たせ、と小さく呟いて着いていこう。

KP さっき行った庭園と客室があるだけだよ!
そんなに大きな旅館じゃないからね。

長谷部国重 其れは、邪魔をしたか
兎も角合流するのであれば、共に。

余り彼方此方と出歩ける場所が無さそうであれば、
足は自然と客室へ向くだろう。

KP はーい、了解。
部屋に帰るとご馳走は片付けられ、柔らかそうなふかふかの白いお布団はそのまま、お茶請けの小さなおまんじゅうと暖かなお茶だけがぽつんと置かれていました。
ご馳走を運び出していた黒猫が会釈をして、すれ違いに出ていきます。
ぱたんと襖が閉じられた音がして、部屋の中は二人きりになりました。

ここで〈アイデア〉と〈聞き耳〉が振れるよ。

長谷部国重 CCB<=70【アイデア】
Cthulhu : (1D100<=70) > 3 > 決定的成功/スペシャル
CCB<=75【聞き耳】
Cthulhu : (1D100<=75) > 88 > 失敗

KP 出た

長谷部国重 落差が酷いな。
Cじゃないか。…通常成功二つには出来ないか?

KP あ、そのつもりだったよ。聞き耳の情報も出そう!

長谷部国重 ああ、有難う。

KP じゃあまずはアイデア、前に写真ででも見せてもらったことがあるのかもしれない。
光忠の実家で飼っている黒猫とよく似ている、と気が付くだろう。

それから聞き耳、「ありがとうございましたにゃ、お帰りはお布団ですにゃ」との声を微かに聞く。

長谷部国重 するりと入れ違いに出て往く猫。
個体差に疎い己に湧く既視感に瞬く。

「……お前の家で飼っていた猫、なんて名だったか」

声の届く範囲に居るなら、ほつ、と
尋ねるでもなく零し

矢張り人語を操るんだよなあ、と
内容よりも先に其方に関心して、座卓へつこう。

長船光忠 「……ん、え、うちの猫?
 ノワールだけど……いきなりどうしたの」

そういえばぼんやりしていたからあまりよく見ていなかったけど、さっき出て行った猫が黒猫だったから思い出したのかな、と思いつつ。
座卓へ向かうなら、持っていた服は適当に辺りに置いて僕も対面に座ろうか。

長谷部国重 「"クロ"か……、否、前に見せて貰っただろう。
 妙に似てたからな」

抱えて持っていた着ていた服を
座卓脇へ適当に置いて。

温かな茶の入る湯飲みを手に、
落としていた視線を上げて光忠を見る

「…風呂では、すまなかった」

長船光忠 「あ、ああ……そうだったかな」

扉の方を見遣ってみるけど、もう出て行った後だから確認もしようがない。
食べるにも、どうにも気まずくてどうすれば、と視線を彷徨わせていたけど、声を掛けられて、は、と顔を上げようか。

「…いや、長谷部くんが謝ることじゃないんだよ。
 僕のほうこそ、ごめん…」

「本当に、何も君のせいじゃないから。
 僕はそんなこと思っていないから、自分を責めたりしないで」

長谷部国重 「……ありがとう、
 お前は優しいから、…胡坐をかくのも良い加減にしないとな。」

顔を上げて、言い募る様子に目を細める
昔から、此奴は優しい。

温かな茶を喉に一口二口と流し、
意識して緩く息を逃す

「だが、
 お前の望む事を何一つ出来なかったのは事実だ」

長船光忠 「……望む事、なんて。
 それを言ったら僕だって、君が本当にしてほしいこと、なにひとつ出来ていないよ」

待っていて、と。
君に応えるために言ったはずだったのに、結局は君を苦しめてしまった。
視線を落として、ぐずぐずと言いながら黒文字で饅頭を切り分けるけど、口に運ぶことはせずにまた視線を上げる。

「別に最初から、君に言う事を聞かせようと思って言ったわけじゃないんだ。
 だから、君が悔いることじゃない」

長谷部国重 「其れは、もう良いんだ。
 嫌がっていたのに、無理を重ねて強いた。」

湯飲みを置いて、黒文字を手に
茶請けの皿を眼の前へ移動させて
湯船の中で流したためか、
比べれば随分と気分が凪いでいた。


「お前の望みにも、正しさにも
 沿いたかったんだ。…出来なかったけどな。」

いけないことすら
満足に出来なかったと薄ら眉尻を下げて笑う。
切り分けた饅頭のひとかけを口に運び、
じわと広がる甘みを受けて。

湯飲みを手に、もう一つ緩く息を吐き
意を決するには少し弱く、視線を向けて

「厚顔を承知で言うが、
 ……まだ、お前と居ても、良いか」

長船光忠 「嫌だったんじゃないよ。
 ……本当に、全部僕の、わがままだから」

ゆる、と首を振って、笑みを返そうとして、けれど唇の端を吊り上げるだけになってしまう。
最初から望まれているもの、分かっていたはずなのに。
どうして、不安にさせるばかりだったのかって、今更悔いても遅いのに。

「……僕と居たって、君は苦しむばっかりじゃないか。
 それなのに、……どうして、」

今度こそ、もう僕がすることをなんにも信じられなくて、苦しい思いをするばかりになるかもしれないのに。
それでも、側にいてもいいの、と呟く声がひどく未練がましくて、もう、どうしようもなく嫌だった。

長谷部国重 光忠らしくもない笑み方に、
また何処かが軋む心地を得る

「勿論、…
 お前が望むなら、…離れる、が」

別れるべきだろうと
今ではなくとも思っているのに
気持ちが捨てきれない儘で

「それでも、まだ…お前と、いたい。」

湯飲みを持つ指先が白くなる
凪いだと思っていた感情の彼是が溢れそうで
無理矢理、温まった茶を咽喉へ流し
深く深くついた息は、薄らと震えてしまった

「……生理的に無理なら、そうと言ってくれ、
 それなら、もう お前の前からは、消えるから」

長船光忠 僕と居たいと、その一言に、言葉より先にぼろりと涙があふれてしまって、
慌てて両手で拭ったけれども、隠せるはずもなく。
よかった、と震える声でつぶやいた。

「今度こそ、また、別れようって言われるのかなって、思ってた、」

きっと、僕が無理だと言えば、本当に君は僕の前から姿を消すつもりなのだろう。
それどころか、……なんて考えそうになって、ゆるりと首を振った。
消えてほしいなんて思ったことなど、あるはずもないのに。

「あのね、好き、なんだ、本当に…、
 君の望むようなこと、なんにもできなくて、不安にさせるばっかりで、
 ……それどころか、君に嫌な記憶ばかり、植え付けてしまって……。
 どの口が、ってずっと思ってる、
 でも好きで、離れられなくて、……離したく、ないんだ」

湯呑みを握りしめる手に手を伸ばして、包み込むように触れさせる。
すきだよ、ほんとうに、と、今更信じてもらえもしなくて当然だと分かって、それでも、伝えたかった。

長谷部国重 ほろと、零れ落ちた雫に目を瞠る
咄嗟に浮かし掛けた腰は、
続く言葉の響に何とか、元位置へ戻り

「……お前に、好きと言って貰えるのは、本当に嬉しい。
 そもそも、… 俺が欲深いだけで、
 お前だってずっと、俺に好意を伝えてくれているのにな。」

思わず固く握り込もうとしていた手指を
湯飲みを握る其の上から包まれて瞬くも、
引いたり拒んだりすることはせぬ儘、つとめて力を抜く

「ありがとう、
 ……恋人、でいようとするから、苦しいんだろうな、きっと。
 お前の好き、に合わせて、その上で一緒に居られるなら
 まだ、…お前の傍に、いられるかと思う、んだが。」

力を抜こうとして眉尻を下げてわらう
恋情を手放せば、諦めれば良いだけだと
何でもない事の様に告げたかった

「そうしたら、一緒に暮らせるかな、…お前と」

長船光忠 こいびと、とぽつりとつぶやいて、視線をふらりと落としてしまう。
頭の芯が冷えていく心地で、何か言わなきゃと思うのに、なにも、言葉にならなくて。

恋人でなくなるなら、友達や親友か、それとも、一体何になるのだろう。

恋人という肩書を捨てれば、恋人としての関係を諦めてしまえば、
長谷部くんは、楽になれるんだろうか。

側にいられるって、一緒に暮らせるって、それだけで長谷部くんは、満足するつもりなのか、とか。

ぐずぐずと、ぐるぐると、まとまらない考えを巡らせた僕の視線の先に、両手で包み込んだ指先があった。
君の体温が好きだった。触れていれば、近くにいるだけでも、匂いに温度に胸が高鳴るのに、自分の居場所だと思えて、安堵したから。
けれどただ触れることは、…それ以上を望む長谷部くんにとっては。

「……もう、触れないほうがいい?

 キスするのも、同じベッドで眠るのも、抱きしめるのも……こうやって、手を重ねるのも、君には、つらいばっかりだった?」

長谷部国重 「……そういう関係の、心算だったが」

ぽつ、と落とされた声に
嗚呼と小さく零す。
もしかして、其処から勘違いしていたのだろうか。

「元々、友人だったしな…
 俺がお前に懸想して、余計な物ばかり抱いて
 それでこんな、…お前の願いも裏切って、ばかりで」

俺よりも少しだけ高い事が多い光忠の体温
長くてすらと伸びた指の綺麗さに、
改めて何処も彼処も整った奴だなと一種逃避めいて思う。

「お前に触れられるのは、好きだよ。つらいばかりじゃあ、ない。
 近くにいるんだと、存在を感じられて、
 此処にいるのだと思えて安心するのは、嘘じゃない。」


触れ合いが多少普通よりも多かろうと
友人の範疇で留まる物であるなら

「お前の気持ちがそこで十分なら、
 俺だって、……十分でいたいんだ」

「だから、…お前にとっては、きっと何も変わらない」

長船光忠 「こいびと、だよ。
 僕だって、そのつもりだった、
 君が好きになったばっかりじゃないんだ、
 僕だって、好きで、…愛してる、のに…」

すきだとか、こいびとだとか、…あいしてるだとか、
すきだったはずなのに、こいびとだと思っていたのに、同じ気持ちじゃないなんて、
今度こそ分からなくなりそうで、見失いそうで。

途方に暮れるような声で必死で言い募るうち、少し呼吸が浅くなっているのを自覚して、ふう、と短く深呼吸を挟む。
ようやく少し顔を上げて、長谷部くんの顔を覗き込んで。

「……さっきも言ったけど、ちゃんと恋人として、君のこと見てるよ。
 恋人として、好きだって思ってる。
 ……君に、また言わせてしまった、けど」

「僕が良ければ良いって話じゃないんだ、
 君が我慢していれば済むなんて、そんなの僕は嫌だよ」

長谷部国重 「……そうか、……すまない。
 疑う様な事ばかり、…」

恋人と、思って貰えているなら
もうそれで
それだけで、
十分だと言い聞かせて繰り返して今此処に居る
手を伸ばして求めて結局全て駄目で此処に居るのだ。

覗きこむ、金色に眉尻を下げる儘藤色を細め

「じゃあ、 どう、すればいいんだ 」

視線を落として、絞り出した途方に暮れた声
此奴に委ねるべきものじゃあ無いと、
頭蓋の内では口煩く否定する声がするのに。

「我慢、出来てないんだ …何も。
 言うのも請うのももう止めようと何度も思っても
 結局我慢、できてないんだ、…わかっただろう、さっきだって。」

「でも、お前と居たいんだ」

「どう、したら良い……、」

湯飲みを握る手が震える
声も息も震えて眼の奥がまた熱を持って

そんなの、
そんなの厭だと言うなら
いっそ教えて欲しかった

長船光忠 「どうすれば、いいのかな、…ごめんね、僕にも、分からないんだよ」

ひとつ間違えば、今度こそ側にいられなくなるんじゃないかって、ずっと、ずっと怯えている。
どうすれば君に不安を感じさせずに側にいられるかってずっと考え続けて、それでも分からなくて。

場違いだとは分かりつつ、我慢できていないと紡ぐ震える声を、吐息を、どうしようもなく愛しいと思ってしまう。
手から湯呑みを抜き取って、手を握ったまま持ち上げれば、握った手に唇を、そっと触れさせて。

「言っただろう、僕だって君と同じ気持ちで愛してる。
 ……少なくとも、そうだと自覚してる。
 いけないことなんかじゃないよ、好きなんだから、当然だって思ってほしい」

「我慢しなくたって、側にいるよ。
 僕ももっと、君を不安にさせないように、考えるから」

……こんなことまた言うなんて、きっと随分ひどい事なんだろうね、と自嘲を含めた笑いの中に零して。
それから手は座卓に戻して腰を上げれば、膝を擦って、長谷部くんの座る隣まで移動しよう。

長谷部国重 「―――……すまない、
 お前に、委ねるような事じゃなかった、な」

そっと抜き取られた湯飲みの中は既に冷え切っていて
持ち上げられる様子をぼんやり追い、
落とされた口付けに、瞬く。
瞬いて、 また泣きそうに顔が歪んだ。

「……おなじ、じゃ ないだろ……。
 いや、… お前がそうと、言うなら…」

信じ、なければ 信じたかった
ぐ、と下唇を噛み締めて息を一つ飲み込む。

「――…わか、った。
 じゃあ、……待てば、良いか?
 今度こそ、――今度こそ、ちゃんと、」

努力する、と震える声で落としたけれど。

俺の言葉にどれ程の信憑性と信頼があるのだろう。
少なくとも、自分自身ではまるで信じられないのに。

「すまない、 出来ない、かもしれ、ない」

隣に移動してくれたのに、
其方を見れずに視線が落ちた儘、情けなく零す。

長船光忠 震える声には、ゆるり、とかぶりを振った。
いいんだ、と呟けば、視線を合わせてくれない君に手を伸ばして、
指の先で、くすぐるように喉の緩やかな稜線を辿っていく。

泣いてほしい訳じゃなくて、苦しげに僕に誓ってほしい訳でもなくて、
けれども声を震わせて、途切れさせながら、それでも紡いでくれる言葉が愛しい。
……この愛しさが、君が本当に欲しい、僕の気持ちなんだろうか。

「信じることも、待つことも、努力も我慢も、もういらない。
 そんなこと、君に誓わせることじゃなかったんだ」

つつ、と丁寧に辿った指先が喉仏を過ぎ、輪郭を辿って、耳に触れて。

困る事になる、哂われるのは、つらいから、とそう言われて、
意図して触れないように、とずっと気を付けていた耳朶に、唇を寄せる。
泣き出しそうなかわいい目元、耳の先、ちゅう、と小さく口付けて。

「君が僕を困らせる顔、見せてよ。
 愛したいん、だ。……今度こそ、君が、こまるほど」

「ね、長谷部くん、…たべちゃいたいよ、
 ……たべても、いい?」

そう聞きながら、既に君の耳朶を狙って、あ、と口を開いた。

長谷部国重 視界の隅で手を伸ばされ、無意識に身を固くした
擽るかに淡く触れる手指に、強張る中、緊張に薄く咽喉が鳴る

意図を測れずに、思わず向いた視線が揺れた。

「……確かに、何を言っても
 信憑性も何も、ないな……」

信じる事も待つ事すらも出来ず
努力も我慢も結局は出来なくて

言葉を力無く紡ぐなかでも止まらぬ指の動き
せめて五指を固く握り込んで耐えようとしていたが
耳朶に触れる指先に思わず、肩が揺れる

身を寄せられて畳の上、身を退く動きで姿勢を崩し
何、と漏らした声は動揺と不安で酷く揺らいで

「ッ、……」

今の状況を理解出来ずに固まる儘、
耳朶への柔い感触にびくりと明瞭に身体が跳ねた。
目許に、耳に押し当てられる唇にも理解より先に身体が揺れる

見っとも無く請うて
我慢できないと漏らした末
散々拒まれた其れを気紛れに与えられているのか
己が強要した末の物なのか判じられず、泣きそうに顔が歪む

なのに、

「……、お前になら、
 何をされたって、良い」

問われて、応じてしまうのはいつだって思う事に他ならず
紡いでから、しまったと頭蓋の奥で悔いるばかり

やっぱりやめたと手を退かれたら、
冗談だよと笑われたら
今迄の顔と言葉がちらついて、握り込んだ手が震えた

長船光忠 指先で辿るたびに、びくりと幾度も小さく身体を揺らすものだから、
大丈夫、と宥める言葉の代わりに、
反対の手ではゆっくりと、腕や肩を撫で下ろす。
崩した姿勢は背中に手を当てて支えながら、それでも、やめない。

震える声も、からだも、吐息も、ぜんぶが愛おしくて、
また泣きそうな表情を浮かべたことに、それでも委ねてくれた言葉に、
胸の奥が痛いほど、鼓動がうるさい。

「……君が嫌なことはしないよ、
 身も心も、痛むことも、苦しいことも、しないから」

何をされたって、と委ねる言葉に返すように耳元でそう、吹き込んで、
返す言葉を待つ間もなく、かぷ、と噛みついて、弱く歯を立てた。

弾力を感じながら、かじるように時折すこし強く、歯を立てて、
複雑なかたちをした場所に丁寧に唾液を塗りつけるように、舌先を這わせて。
ぢゅ、ちゅう、とわざと音をさせながら、吸い付いてみる。

密着しているからか、それとも別の理由があってか、
高い体温に、じんわりと汗ばんでしまう。
手汗を感じて、耳に触れていた力を弱めるのと同時、
君が強く握りこんだこぶしにも、気が付いてしまって。

はふ、と短く息をついて唇を舐め、ほんの少しだけ身を離しながら、
君の手を包んで持ち上げて、指の付け根の凹凸に、ちゅう、と唇を触れさせる。

「怖いの?
 ……それとも、つらいかな、僕にこうやって触られるのは」

長谷部国重 逃げる様に姿勢を崩しても其れ以上何処にも行き様が無い
己よりも少し大きな掌が宥める様に触れる事で
震える息をついて落ち着きを得ようと試みる、けれど

「…ッ、声 …近い」

耳元で喋られるだけで落ち着きなど吹き飛んで仕舞う
逃れる様に首を振ろうとして、耳へ歯牙の硬質さを受け
ひ、と引き攣れるような息とも声とも取れる音が短く零れる

「良い、んだ
 痛かろうが、苦しかろうが、……お前にな ら 、ッぁ」

苦痛に怯えて膠着していた
けれど怨む心も責める心も湧かなかった
己の事を嫌悪して唾棄して忌避したとて
結局欲しがったのは愛する人の心ひとつで

頭蓋の中で彼是と疑問と推量を幾ら並ばせようとしても
受ける感触と生じる刺激に何も考えが纏まらない

ただでさえ過敏な耳を柔く齧られて
懸命に口を閉ざし、声を漏らすまいとしても
水音を伴う吸い付きの音と、刺激に大袈裟な程また身が揺れる
頬が、耳が、目許が熱い。

「ッぁ、 や、止め、
 ――……みつ、ただ、 ッ」

この儘では、拙いと
息が揺れて濡れ始める中でも握り続けた拳を掴まれて眼を見開く
指へと落とされた口付けが、唇が、常より熱くて視線を逃す

問いかけへのこたえを探して、視線を伏す
つらさもこわさも、触れられる事自体への物ではなく

「触れられる事が、じゃない…
 放り出される、のが …怖いだけ だ、」

図に乗って応じたら、
刺激される儘に欲を晒したら、
あっさりと手を退かれるのではないかと
そんな事ばかり脳裏に浮かぶ。身勝手な恐怖。

なのに、
過剰な程握り込んでいた五指を緩ませるだけで
何か一つを緩めるだけで、決壊して仕舞いそうで

「 愛して、くれる、って ……」

信じたい
欲しくて欲しくて仕方が無かったその心を、今度こそ

長船光忠 触れるたび揺れる吐息と、もれだすいつもと違う声色と、びくりと幾度も揺れる身体。
じわ、と頭の中が熱くなるように痺れていく、その感覚に、
自分でも驚くほど、息が浅く、熱く、上がってしまっていた。

怯えさせないように、優しく、と撫でていたはずの手にも熱を持って、
宥めるための手つきが、どうにも震えてしまいそうで。
だめだ、と思いながらも、奥底から何かが、どろり、融けだしていく感覚。

「嫌だよ、君を傷つけることはしたくない、
 ……したくない、けど、……ど、しよ」

声が、吐息が、震える。
どうしよう。
どうしてこんなに、思考も、冷静さも、保てないんだろう。

包んだ指先に握りこまれた力は、依然、抜けていなくて。
固く力のこもった手に、場所を変えて幾度もくちづけて、
包み込んだ指先ですり、とさすって、
できるだけやさしく、と意識して触れながら、君の怯える言葉を聞いていた。

「……愛したいん、だ、ちゃんと、
 放り出したりしない、し、……もう、傷つけたくない」

「怖いなら、僕の手を握っていて。
 離せないくらい強く、つよく、掴んでてよ」

視線を上げて、伏せられた瞳を、覗き込んで。
これまでさんざ傷つけたんだ、……今更、信じろと大きな口を叩く気はなくて、
それでも、怯えさせたいわけでは、ないから。

長谷部国重 湯殿では寒さばかり感じていた筈の体が熱い
掌を宛がわれている箇所、指が触れる箇所が薄く痺れるようで
震えながら逃す息が、熱い。

「……逆だ、」

傷付けたくないと震える声に
此方も泣き出しそうな顔と声で短く否定を返す。

「お前だから、… 良いんだ、
 痛い事だって、…何を、したって」

お前だから
光忠だから、良いんだと。
唯一人だけが欲しくて、唯一人だけに赦すことなのだと
震える声で、どうしようと途方に暮れる声に本心を紡いだ


何かを守るように
硬く固く握りしめた筈の五指が
幾度も押し当てられる唇の熱さに、触れる指先の熱に
ついにはほろり、崩れる様に解けてしまった

「……、触れても、」

良いのだろうか
恐怖も忌避も何処か暈けて仕舞って
ただ愛おしい人に触れたい欲が湧いて仕舞って
恐々と開いた五指が、さすり触れてくれていた手指へ絡みにゆく
かなうなら、指同士を深く絡めるように繋ぎたがって

眼の奥が酷く熱かった
ぼろ、と伝う感触で漸く、また泣いている事を自覚する

「みつ 、ただ」

覗きこまれて漸く視線を合わせた
滲む視界の中でも、見える金色に、何故だか安堵を得て力を抜く。

長船光忠 僕だから、何をされたって構わない、と。
泣き出しそうに教えてくれたその気持ちは、僕にだって当然覚えがあって、
それだから、ひとつ、小さく頷いて返した。

「その気持ちは、嬉しいよ。
 …でも、本当に嫌なら、殴って。蹴とばして、拒んで。
 ……僕だって君に、つらい思いはさせたくないよ」

それでも、それだけは譲れなくて。
きっと随分情けない顔で、揺れそうな声で、
それでもなんとか、伝えたかった。


ようやくゆるゆると解けた君の指先が、まるで求めるように僕の手を握り返して、
指と指を絡め合うように握り合わせたがる手に、
堪えがたいほどの愛おしさが、湧き出しては止まらない。

ぎゅう、とこちらからもしっかりと握り返せば、
ようやくこちらを見てくれた赤らんだ頬に、ほろりと滴が伝って。
つられて、じわ、と視界が潤むのを、何とかはにかんで、へたくそに誤魔化して、
耳に触れていた指先で、涙をそっと拭った。

「……はせ、べ、くん、
 すき、だよ、…愛してる、」

繋ぎ合った熱い手を、く、と引いて、
頬を撫でていた手は、大切なものを包み込むように触れて。
懸命に名を呼んでくれたその唇を、その声ごと、たべてしまいたくて、
熱く震えた吐息交じりに囁いた言葉のあと、
僅かな距離を詰めてしまおうと、
熱い唇で、かぷり、とかじりついてしまおうと、顔を近づける。

長谷部国重 「……そうして、お前が
 立ち止まって仕舞うほうが、… 俺は、つらい」
「勿論本当に厭な時は、…そう示す、から」

気遣いを理由に、
今も手を止められるのなら
もう何も言ったり示したりしたくないとも、思う。

気遣ってくれる心が嬉しくとも、
どうしたって、そんな臆病と我儘を紡いでしまって眉尻を下げる。

握り込んだ五指を握り返されて、息を零す
情けなく泣いて滲んだ視界の中で、わらう気配を知り
指先が雫を拭うなら、幾分金色も見やすくなるだろうか

繋いで
握り込んだ五指は解かぬ儘
宛がわれた掌に頬を静かに押し当てるだけが精一杯で。
寄せられる顔に、双眸を静かに伏せた。

「ん……」

熱を孕んだ唇が触れるだけで、また肩が揺らぐ
開きたがる唇を自制で懸命に閉じた儘
柔い感触を与えられる儘に受け入れて。

長船光忠 つらい、と言われてしまっては、もうどうしようもない。
情けなく笑ったまま、けどもしっかり瞳を覗き込んで、わかった、とひとつ頷いて、
少し赤らんだ目尻を、褒めるつもりで指先でなぞった。


頬に触れさせた手に甘えるような仕草と、ゆっくりと伏せられた瞳、
受け入れてくれようとしていると知れただけで、思わず握った手に力がこもって、
それからごくりと、喉が鳴る。

食むように、柔らかさを味わうように、唇を挟み込んでは、
下唇に吸い付いて、ちゅう、とわざと音を立てて聞かせてみせて。
宥めるようにと肩や腕に触れていた手も、その目的を忘れて、
ぎゅう、と思わず力をこめて握りこんでしまう。

ぞわり、と背を駆け上がる痺れに、浮かされるように零れる吐息が熱い。
こんなに耐え難い渇きを覚えたのは初めてで。

「たべ、たい、
 ……はせべくん、たべちゃいたい、
 ねえ、いいよね……?」

互いの吐息が絡む僅かな距離でそう、懇願するように囁いて、
答えも待たず、伸ばした舌で赤い綴じ目をそろりと撫でて、
かぷ、と目の前の赤い唇に、戯れに歯を立ててしまう。

長谷部国重 自制心と緊張と不安と期待で 如何にかなりそうだ。

今にも飛び掛かりたいような衝動と欲を
肥大した不安だけで懸命に捻じ伏せている

ぎゅうと更に握り込まれた手を己からも握り返し
唇を食む動きに、吸い付きの淡い刺激に、
一々身を揺らし竦めて過剰な程、反応して仕舞う

唇が離れた途端、 はぁ、と吐き出した息は
詰めていたにしてはやけに熱ばかり帯びて
熱に掠れを含む囁きを受けて、
其れだけで ぁ、と薄く音が洩れる

「 ……、」

どちらの息なのかすらわからぬ距離で
「残すなよ」と囁いた筈の声は酷く淡く

熱濡れた軟体の先で撫ぜられ、背を震わせながら
自制して閉ざしていた筈の唇を薄らと開く
歯牙の硬質さを柔い個所へ受けて
ん、ン とむずがるような薄い声が漏れる。

「……は 、……」

己の軟体先で、歯を立てられた唇を確かめるようにちらと舐め
尚もと受け入れを示す様にもう僅かばかり、口を開く。

長船光忠 僕のすることひとつひとつに、びくり、と大げさに反応を返してくれるのが、あんまりに愛おしくて、
頭の中も、繋ぎあった手も、身体じゅうどこもかしこも熱くって、じわりと汗がにじみ出す。

「残さない、ぜんぶ、
 ……きみの全部、僕のもの、だから」

鼻先を掠めた熱い吐息と、囁かれた声に、どうしようもない渇きと飢えが止まらなくて、
声が、吐息が、余裕もなく震えていた。

ん、と小さく零れた声と、求めるように触れた舌先の、赤さと熱に誘われて、
招き入れるように開かれた唇に、首を少し傾げて、半ば捻じ込むように舌を差し入れてしまう。
整った歯列をひとつひとつ舌先でなぞって、
誘惑させてきた舌に絡ませようと、ざらりと擦りつけてみて。
溢れて止まらない唾液を絡ませ、粘膜同士が触れ合うのは、
まるで熱い口内に融かされてしまうようにも錯覚した。

はせべくん、と時折かすかな声をあつい吐息と共に零しながら、
身体に触れさせた手はのろのろと動かして、腰や背の輪郭を辿るように指先を這わせる。
興奮して跳ねる胸の内側が、うるさくてたまらない。

長谷部国重 「お前が望めば、 …いつだって
 ぜんぶ、お前のものだ」

もうどちらの吐息がどれ程なのかもわからぬ程
酷く近しい距離で息を雑じらせ、飲み込んで

捩じ込まれた軟体の熱さに眩々する
厚みのある軟体を全て受け入れようと口を開き
薄く首を傾いで唇同士をぴたりと塞ぎ合う
軟体同士絡ませて表面を擦らせて
己の物ではない粘膜の味に 背がぞくぞくと震え出す

「…っは、……」

名を、掠れた声で呼ばれて 握る手指が震えた。
繋げて絡めて溢れた唾液を咽喉へ流し、濡れた息を零して
畳の上、逃れようと動いた際にか、
みじろぎ震える事が多くなった所為か、
崩れた浴衣から覗く膚が辿る手の動きを受け熱を帯びて染まり
 
「みつ、 」

名を呼ぼうとして零した声が余りにも震えていて噤む。

長船光忠 狭い口内で何とか受け入れようとされるほど、もっともっとと暴きたくなってしまうような、
自分でも困惑してしまうほどの情動が身体の中をぐるぐると渦巻いていた。

ざらつく舌と舌が絡み合って、じゅ、と下品な音を立てて舌先に吸い付いて、
時折あふれる吐息が、唇を撫でるのが、ひどく、あつくて。
ン、とたまに堪えきれずに、色を帯びた声を漏らしてしまうのが、抑えきれない。

こくり、とふたり分の唾液を飲み下す喉の動きに誘われ、喉仏にがぶりと歯を立てて噛みつきたくなってしまって、
その時初めて、凶暴な欲を自覚してしまった。
名残惜しく、ちゅう、と下唇に吸い付いてようやく唇を解放して、
それでも密着した身体はほとんど離せないまま、整わない短い吐息を零し続ける。

緩い襟元から覗いた肌はほんのりと桜色に色付いて、おいしそうで、
思わず鎖骨のあたりに、ちゅう、と口付けて。
……先ほどまでは、寒くないのかな、なんて呑気に思うばかりだった肌の色が、
どうしてこんなに目に毒なのか。

震えた声に名を呼ばれかけて、けれど途中で止められてしまって。
ふ、と整わない息のまま、きっと赤く上気した頬で笑いかける。

「どうしたの、…呼んでよ。
 僕、君に名前呼ばれるの、好きだから。
 ……ね、お願い」

腰のあたりを彷徨わせていた指を、また喉仏に宛がい、
それから、かぷり、力加減に気を付けて、甘噛みするように喉に歯を立てて。

長谷部国重 静謐な室内へ、粘膜同士の水音が響く
舌の表面が薄く痺れて仕舞う程擦れ合せて
漸うと解放する唇は色を濃くさせ、
閉じ切れぬ唇から軟体の先と唾液の糸が伝う

「ッぁ、… 」

はだけた胸元へ寄せられ、鎖骨辺りへ唇を落とされて
思わず、繋がぬ方の手指を蒼艶の髪に差し入れる
日頃手を繋ぐ事すら怯えていた癖
触れたくて、触れたくて如何仕様もなく
緩と掻き混ぜる様に髪を乱し撫ぜ

「みつ、ただ ……、
 ――っ、……、ンッ ………ぁ、…」
 
御願い、と
赤らむ肌でわらう顔を直視できずに視線が揺らいだ
咽喉元への指に肩を跳ねさせ、思わず後ろへ傾いだ身体

頭蓋が己の頸許へ寄る其の動きから逃げるのではなく、
咽喉を反らし晒して見せる姿勢で受け入れようとして

崩れる姿勢の中、投げ出していた足の片方を
相手の脚の間へ入れて仕舞おうと動いたのは半ば無意識の物だった

長船光忠 くしゃ、と少し雑な手つきで髪に触れてくれるのが嬉しくて、
いつもより随分熱い手に、ただ甘えるように、頭を擦り寄せる。
ようやく触れてくれた手が嬉しくて、
ほんの少しの間だけだけれど、その手の熱に目を伏せて感じ入っていた。

「ん、…ふふ、はせべくん、
 すき、好きだよ、…あいして、る、」

呼ばれた名前に応えるように、愛しい人の名を口にするだけで、じわり、と胸の内が暖かくなるようで。
薄らと笑みを浮かべて、そのまま、見せつけるように反らされた喉元に、甘噛みするように歯を立てた。

痛みのないように気を付けながら、柔らかい肌にかぷかぷと何度も噛みついて、
張り出した喉仏の一番高いところを、撫で上げるように舌を擦り付ける。
舌や唇で感じる肌の感触や、君の匂いに包み込まれる感覚に、
じわりと頭の芯が甘い痺れに浸されていくようだった。

どさ、と押し倒す姿勢で、長谷部くんと一緒に、畳の上に倒れこんでしまって、
僕のそれと絡めるように入り込んだ脚が、腰元で蟠る熱を掠めて、思わず小さく息を飲んだ。

「……ど、しよ、…僕、いま、興奮してる…かも、」

へら、と下手くそに笑みを作って、片手は繋いだまま、もう片方を長谷部くんの顔の横について、身体を支え、
自分は今どんな顔をしているのか分からないまま、長谷部くんの藤色をじいと見下ろした。

長谷部国重 指の間をさらと流れる柔い感触が堪らなく好きで
時折頭皮を掠める指先はきっと酷く熱いものだっただろう

「ん、…好き、…すきだ、光忠……
 ……ッひ、…! ぅ、……ん、 ン、」

譫言めいて繰り返す想いは
咽喉への歯牙を受けて上擦った音にすり替わる
硬質な感触と柔い唇と、濡れた軟体を同時に受けて
ひ、と引き攣るような音も咽喉越しに伝わるだろうか
咽喉仏をなぶられて、幾度も腰が跳ね、くぐもった声が零れ続けて
獣が甘えている様な、食い破るのを堪えている様な様子に、
急所を晒す己の姿勢にぞく、と幾度も甘い痺れが走る

「…ッ、ぁ 」

畳の上に崩れ落ちる様に身を倒して
みじろいだ際、這入り込ませた膝頭が熱に触れて
己の其れへ触れた訳でもない癖、びくりと揺れてしまう

熱息を、逃す様について

「……"かも"、… なの、か……?」

今度は意図を以て間に在る足を擡げ、
確かに熱を帯びて硬度を増した其処を刺激する為に膝頭を押し当てて
頭蓋を慈しんでいた手が、稜線を辿り落ち頬を包むように触れる。
どろりと熱欲が滲み融けた藤色が逆光に昏んだ金色を見上げ細くなる

長船光忠 好き、の一言に、どくりと鼓動が一拍飛ばしに跳ねて、
歯を柔く沈めるたび甘く洩れる声に、壊れそうなほど高鳴っている。
あまく、やわく、歯を立てては、噛み千切りたくなる衝動を何度も飲み下していた。

「…っ、ん、ッぁ、
 ……ちょ、っと、それはだめ…!」

脚の間、ぐ、と押し付けられた膝に、思わず身体を大げさに跳ねさせてしまって、
ふうふうと短い呼吸を繰り返しながら、必死で腰に集まる熱から意識を逸らそうとしても、無理な話だった。
は、と間近で絡み合う吐息が、ひどく熱を持っている。
じわりと汗が滲むほど、暑くて、熱くて、頭がぐらぐらと揺さぶられるみたいだ。

頬を包みこむ手のひらに、頬擦りするように頭を揺らして、
藤色の奥に滲ませた熱の色に、ごくり、と渇ききった喉を鳴らす。

「こんな、……本当に、こんなにわけ分かんなくなると、思って、なくて、
 …だから、いたずらしちゃ、だめ、」

何とか保っている理性も決壊寸前で、ほんとうに、どうにかなってしまいそうだ。
ね、と首を傾げて笑いかけ、唇の端に、触れるだけのキスを落として、
さらり、と煤色の髪に、そっと指を差し入れる。

長谷部国重 膚薄い急所を晒して、歯牙を埋め込ませて
いっそ強く噛んでくれたらと夢想するだけで熱が昂じて止まない

だめ、の声を受け体の動きも、
息も、一瞬にして止まる

数拍、或はもう少し長く 無意識に詰めた息を
無理矢理にでも逃し、強張った体から力を抜く

掌へ摺り付く動きを受けながら
熱に浮かされていた眼は狼狽に揺らぐ
擡げていた足を力無く畳の上へと戻す

「……いたずらだって、思うのか。
 お前、… この期に及んで、 ……」

結局、理性が一番大事なのだと
吐露された心地で、双眸を伏し

落ちてくる口付けも、髪に差し入れられた指も
昂じた熱を宥めるには少し足りなくて
繋いでいた手指も何もかもから力を抜いた。

長船光忠 ふっ、と、瞳が色を変えたのが分かった。
戸惑うように揺れて、全身から、ぱたりと力が抜けて。
握られていた手も、握り返す力がなくなって、それで、
……また間違えた、とようやく自覚した。

たちまち、熱に浮かされていた頭の芯が冷やされていく。
自分のことばかり、一生懸命になって。
傷つけまいと、そう思っていたはずなのに。

髪をゆるゆると撫ぜて、力を抜いてしまった手を握る手には、しっかり力をこめて。
荒げた息を、一度深呼吸で少しだけ鎮めて、それから、こつん、と額と額をぶつけ合う。
なるべく、普段通りの穏やかな声を意識して出して、ごめんね、とひとつ、ちいさく語り掛ける。

「長谷部くん、ごめんね、…あのね、嫌だったわけじゃなんだ」

「ただ、君に触られたら、君と一緒に気持ちよくなりたいのに、僕ばっかりで、
 良くしてあげられなくなっちゃうって思ったんだ」

長谷部国重 「…っ、…無理に、
 してほしい、訳じゃ ない、から」

いいんだ、と続けようとした言葉が中々出てこない。
努めて脱力した筈の体が徐々に強張ってゆくのがわかる

また間違えた
また手を伸ばして
また調子に乗って、俺は

自己嫌悪の渦に飲み込まれそうで
眼の前が昏くなるような錯覚の中、
握り締められた手指と、淡くぶつかった額に意識を掬われる

恐る恐ると開いた双眸の先、
視界に入り込むのは、暈けた金色と
普段の――熱を孕まぬ穏やかな声

「それ、が ……
 本当なのか、…俺には、わからない」

「俺、にだけ 
 ……俺ばかり、ある、ものが
 お前にも、あるんだって ……思いたくて」

すまない、と震える声が小さく零れ

「でも、…お前は、そう、なるのが嫌なんだって
 俺、を想う様な事、また言いながら …」

諫められて咎められて
理性を手放したがらないお前の
言い訳だとは思いたく、なかったけれど

行動で否定ばかり、繰り返されているのを
どうしたら、良いのかわからない儘

言葉を絞り出せなくなって、ぼろとまた
蟀谷が濡れてゆくのを感じた。

長船光忠 震えて、苦し気で、途方に暮れるような声で、
ぽつりぽつりと零された言葉を、髪を繰り返し撫でつけながら、聞いていた。
僕が君に抱いている感情を確かめたくてしたことを、いたずら、なんて振り払ってしまって。
どうしてそんなことをしてしまったのだろう、と後悔したって、今更戻るものではない。

声を詰まらせ、涙が零れたのを見て、ごめん、と小さく呟いて、
それから、少しだけ額を離して、舌先を赤くなった目尻に触れさせた。

「ごめん、ごめんね、
 ……つらいことはしないって、約束したのにね」

滴を舐めとって、ちゅう、と目蓋にくちづけをひとつ。
眉をハの字に下げて、きっとひどく情けなく笑ったまま、
握った長谷部くんの手を、自分の脚の間まで導いて、触れさせる。
おさまりきらない熱は、薄い浴衣越しならありありと伝わるはずだ。

「ほら、触って?君に触れて、君の声聞いて、興奮したんだよ。
 ……信じられないなら、ちゃんと触れて、確かめてみて」

長谷部国重 負の連鎖が止まらずに落ちきりそうな心は
其れでも辛抱強く付き合ってくれる存在に随分救われているのだと
柔く撫で続けられた髪と、未だ近しい所から降り注ぐ声にぼんやり思う

情けなくぼたぼたと雫を零すばかりの目許へ
顔を寄せられて薄らと身を固くさせたけれど
そっと舐め取る軟体の熱に、困惑の息を漏らす

「……お前の、本心なら
 辛かろうが、なんだろうが …受け入れる、努力は、…する」

今は無理でも、と小さく添えて
困惑とも哀しみともとれる苦笑を見上げた。
握られた手を持たれれば、不可思議そうにその視線を転じ

熱の存在を知らしめるようなそれにはギクリと強張って
ぇ、と困惑も露わな音を零す

確かに硬度も熱の度合いも増して形を変えた其れを
嘘だろと言う様に指先が辿り、触れて

「っ、でも お前、
 こうなるの、厭なんじゃ、ないのか……」

そうだ先程の様に刺激になってはいけないと
思い当たって慌てて手を退き戻そうとして

長船光忠 驚いているのか、それとも困らせたか、と長谷部くんの様子を見ていれば、
握って導いた場所を指先がそろそろとまさぐって、
そのわずかな触れ合いだけで、思わず、ん、とこぼしてしまいそうになった色を含んだ吐息は、下唇を噛んで飲みこんだ。

「嫌なわけじゃないんだよ。
 …だって、嫌ならそもそも、こんな風に触れたりしない」

君とキスしたり、こうやって熱い肌を触れ合わせることが気持ちいいって分かっていて、
それが嫌なら、きっとどんなに請われてもしようなんて思わないだろう。

すぐに逃げだそうととした手は、追いかけ、指を絡めて、
熱を持った手のひらはじっとりと汗ばんで滑りそうで、
離さないように、ぎゅうっと強く握りしめる。
はにかんでみせた頬は、きっとまだ少し赤らんでいたと思う。

「……気持ちよかった、から、…少し、驚いちゃったんだ、」

長谷部国重 「……厭、じゃあなくても
 そんな気になれない、っていうのは、あるだろ」

慌てて引き戻そうとした手を捉えられてびくりと薄く身が跳ねる
熱い手の温度も汗も、絡められた指も
絡め返す事が怖くて

赤らんだ顔を見返す顔は
未だ涙濡れた眼で不安気な色を濃く滲ませている。

「こう、なった事を否定したかった、から
 ……理性を手放したくなくて、拒んだんじゃ ないのか」

いつだって優先されたそれを
いい加減身に沁みて解っているのだと

はにかんだ顔が愛おしいのに
触れた先に在った熱は確かに昂じていたのに、
自分へ向いているのだと、思ってもいるのに、

そこに手を伸ばせばまた、きっと。

「驚いて、… また、
 駄目、って、拒むのなら」
「……、手を伸ばしてはいけないなら、押さえていてくれないか」

ぎゅ、と
恐々ではあるが、握り締められた手指を握り返した。

長船光忠 握り返されなくとも、きゅう、と指先に力を籠めることはやめない。
見下ろした不安げに歪む藤色の双玉がまだひたりと涙が膜を張っているのを見れば、
また、ちゅ、と目尻に押し付けるように唇を触れさせた。
それから、恥じらいを隠せない笑みは崩さぬまま、と小さくかぶりを振って。

「…でも、僕は、君から触れてくれたこと、すごく嬉しかった。
 こうしたかった、から、ずっと、」

待ち続けた君の気持ちを置き去りにしては意味などなかったのかもしれないけど、それでも、待っていて、と君に告げたときから、ずっと考えてた。
いつかこうやって触れ合えたなら、と。

首の動きで頷いて答えて、
怯えながら、それでもしっかりと握ってくれた指先に、きゅ、とわずかに力を籠めて返す。
僕が拒んでしまったせいで、そんなことを言わせるのは心苦しかったけれど、
それでも怯えるようにきつくきつく、自分の手を握りしめるばかりよりは、きっといいと思いたかった。

片手をしっかりと繋いだまま、下唇に、ちゅう、小さく吸い付いて、
ねえ、と顔を近づけ、耳元で名前を囁く。

「ね、長谷部くん。…ちゃんと、ぎゅって握っててね」

長谷部国重 絡んできた指は湿って、熱いのに
握り返した指は、酷く冷えていた

目蓋へ落とされる唇が柔く熱い
紡がれた言葉を受けて、視線が揺らぐ
嬉しかったという言葉に、また容易く揺らいで
こうしたかった、なんて、言われてしまえば、また

「……、わか らない、んだ
 なぁ、… 俺が、押さえていてくれって
 そう言ったから、……?」

だから、押さえていてくれているのか
繋いでいてくれている手の意図を
また余計な事を言ったばかりに量りかねて

吸い付いた唇に触れたくて
紡がれた名が、嬉しくて、声が滲みるようで

握っていて、という言葉につい己から絡め返した。
恐々とした動きではなく、強く

どんな心境だろうと、
甘く低く響く此奴の声に、体は反応してしまう。

長船光忠 揺れた藤色と、困り果てたように声で紡がれた言葉に、薄く頷く。
凍ってしまいそうに冷え切った手に温度を分け与えたくて、握りしめたまま、すり、と摩るように指先を擦り付けた。

「こうしていたほうが、君は安心できるんだろう?
 …でも、勘違いはしないでね、君に触れられたくないから、じゃない」

「ね、もっと、どこでもいいから、…今度は絶対に拒まないから、触れてほしい。
 君に触れられるのは気持ちいいし、…興奮する、から…」

真っすぐに見つめることはやめないまま、けれど照れくささに少しだけ目を細めて笑って、しっかりと握り返された手の長い指先、きれいな形の桜色の爪に、唇を幾度か触れさせた。

「君が、触れたい、って思った時でいいんだ。
 こうして、手を繋いでいてくれてるだけでも、僕は嬉しい」

僕の言葉ひとつ、触れる肌の温度ひとつに、視線や仕草で返してくれるのが、どうしようもなく愛おしい。
囁きを吹き込んだ耳朶にかぷ、と小さく歯を立てて、薬湯の香りに混じる長谷部くんの匂いに、すん、と鼻を鳴らす。

長谷部国重 湯温も滲みずに凍て付いた手指が
するりと撫でられ擦られて薄くほどけてゆくような

「……―――拒んでも、良いんだ……
 俺が如何こうなるからといって、…我慢も、無理もしなくって、良い。」

受け入れるのではなく
望んでほしかったのだと、
紡ごうとした口は辛うじての自制に閉じる。

「俺は、…いつだって、お前に 触れていたいよ。
 指先だろうが、何 だろう、が 」

見上げる先のこんじきが柔く細められるのを見ながら
何かを返そうとして小さく開閉する口から、
ゆると惑いの息が洩れる。 

眼の縁が熱い
真直ぐに見返す事が出来なくなって、目蓋を少しだけ伏せ
爪の先へ淡く触れる唇を其の指先で、薄く撫ぜる

「まだ俺ばかり、…  
 ……また、俺ばかり、手を伸ばすのか?」

拒まないお前を良い事に、そう薄く震える声で
わらおうとして矢張りうまくいかなかったのは
耳の、奥深くに響く囁きと
耳朶へ触れる硬質さへびくりと身を揺らした所為だ

ひ、と引き攣れたような息飲みの音と、瞬時に染まる耳朶と
大袈裟な程に揺れた身を取り繕う事もできずに
繋げぬ方の掌が迷う動きの末に、相手の纏う浴衣端を握り込む。

長船光忠 「我慢とか、無理をしてるんじゃないよ。
 君に触れられるの、凄く嬉しい。気持ち良くて、好き…
 …僕も、君にたくさん触れたい、」

君が触れてくれる手は、いつも少し冷やっこくて、
でも僕が好きだって、指の動きからも目線からも伝わって、それが優しくて。
拒もうと思ったことなんて、ただの一度もあるわけがない、のにな。

口付けた指先が、唇に触れてくれるのが愛おしくて、
思わず、ふふ、と笑みをこぼして、
ほんの少し、舌先で擽るように撫でて返して、ちゅう、と吸い付いた。
紅でも引いたみたいに鮮やかに赤らんだ目尻を、
すり、と親指の腹で撫でつけ、
歯を立てられて真っ赤になった耳、息を飲んで震えた喉、
びくりと小さく跳ねた肩まで、低い体温に、僕の体温を馴染ませるように、
ゆっくりと手のひらで辿っていく。

僕の声ひとつ、指先ひとつに、君はこんなに、懸命に全身で応えてくれる。
俺ばかり、と不安げに、それでも不器用に笑おうとするから、
ゆる、とかぶりを振って、揺れた肩をゆっくりと撫でた。

「はせべくん、好き、だよ。君のぜんぶ、全部、好き。
 …君の、心も身体も、ぜんぶ丸ごと、愛させて…、」

おねがい、と耳元に揺らぐ吐息と共に言葉を落として、
惑いながら、それでも遠慮がちに浴衣を引いた手に気がつけば、
その愛おしさに思わず、小さく笑みをこぼしていた。

長谷部国重 幾つも、深く息を繰り返して
燻る何もかもを宥めようとする

染み出して止まない疑念も
暴れ出しそうな醜い欲望も
全てを捻じ伏せて、
この柔い愛情を受け入れたい

指先に僅かに、けれど確り感じて仕舞った濡れた其れへ
大袈裟な程、身がびくりと竦む。
こんな反応はいけないと、何度も何度も息を吐き出す。
宥めるような掌の熱に、強張りを解く様な風に、
優しい手に何もかも委ねるように、なりたいと

ゆっくりゆっくり、撫でる掌に
ああ、此奴らしいなと、眉尻を緩く下げる
慈愛の手だ。
思えばずっと、この愛を向けられていた。

「……ん、……、有難う。」
「ありがとう、…光忠
 俺を、愛してくれて、……」

浴衣を握り込む手指からも、つとめて力を抜いた
そっと、伸ばして頬へ触れた指先は、やはり冷えているだろうけれど
優しさを真似るように、そっと掌を頬へ宛がい

「……好きだよ。」

柔い声で、想いを紡ぐ。
穏やかに笑えているだろうか。
溢れる愛おしさは、嘘ではないから
きっと気の抜けたような笑みになっているだろう。
薄震えているのは、最初からだが出来ればそれも止めたかった。

長船光忠 落ち着きを得ようとするように、
いくつも深呼吸を繰り返すのを不思議に見るばかりだった。
ずっと、余裕なく不安げだった表情が、笑みを浮かべようと眉を下げて、
冷え切った震える指先が、掌が、ひやりと頬に触れて、
……好きだ、と笑う声すら、震えていて。

だめだ、と、長谷部くんに見せてはいけないと思うのに、
目の奥が勝手に痛んで、ぼた、と重力に従って滴が落ちるのが止められない。
同じように笑顔で返したくても、ぼろぼろと涙が止まってくれない。

「す、きだ、…愛してるん、だよ、長谷部くん、」

「ぜんぶ、好きなんだ…、君の指も、声も、体温も、心臓の音も。
 どんな気持ちも丸ごと全部、好きで、それが嬉しいし、愛しいのに、
 …なのに、我慢も、無理も、君にばっかりさせてる、」

上手に愛したい、もっと上手にこの気持ちを伝えられたら、
長谷部くんが無理に笑って、好きだなんて言わなくて済む、のに。
きっと柔らかい笑みを浮かべているのだろうけれど、視界が歪んで上手く見えなくて、
ずび、と鼻を啜ったところで、酷く震える声になるばかりだ。

「それでも、好きなんだよ、
 あいしてる、から……、まだ、離れたく、ない、よ、」

頬に触れる手を、上から包むようにそっと触れて、すり、と冷えた温度に肌を寄せて。
指がすり抜けて、どこかへ逃げてしまうのが怖くって、
優しく握っていたはずのどちらの手も、ぎゅう、と力ばかりがこもってしまう。

長谷部国重 見上げた先の顔が、くしゃと歪んで
ぼたぼた、熱い雫を零し始めるものだから
瞬きを挟んで、益々眉尻を下げ

「――……ああ、
 俺も、……愛してるよ、光忠。」

俺とお前の気持ちが
根本的に異なる事など、もう知っている。
解り切っている。

「愛してる、…
 そんなに、苦しそうな顔をさせて、すまない」
「苦しめてすまない、…無理をさせているのは、
 …余計にさせようとしているのは、俺の方だ」

音にして何度も何度も伝えてくれて
触れたいと、言葉では何度も示されて
臆病で優しくて、愛おしい此奴の限界を知りたい訳じゃない

「愛しているよ
 ……お前が、笑う声も、お前の目も、拗ねた声も、
 ひたむきな優しさも、… 少し高い、体温も、
 お前が作ってくれた料理だって、…いてくれた時の、部屋の空気も
 ……言い切れないくらい、…お前の全てが、愛おしいんだ」

頬へ触れた手で薄く撫ぜながら
つとめて柔い声で、ひとつひとつを思い出す様に目を細め
愛おしさを籠めて紡いでゆく。
光忠の手を払わぬようにとしながら、頬の掌を滑らせて
泣きじゃくって体温の増した頭蓋へ指を差し入れて撫ぜる

「抱き締めて、…くれないか
 厭でなければ、で良いから」

もう、其れだけで良い。
其れくらいなら、きっと、強請っても赦されると良い。
強く握りられるのが、手だけでは足りない己に呆れながら請うた。

長船光忠 「君に苦しめられたなんて思ったことないよ、謝ることなんて、何もない。
 ごめんも、ありがとうも、言うのは、僕のほうだ」

小さなことのひとつひとつを紡ぐ声にすら愛おしさを滲ませて、
整わない呼吸を宥めるように、
頬を撫で、頭を撫でてくれる手が優しくて、嬉しくて。
それなのに僕は、大切な人のたったひとりすら、
愛することも、悲しませないことも、できやしないんだ。

泣いていてはいけないと、ぐい、と腕で目元を拭って、
せめて、不器用だろうとも、笑みを浮かべて返してみせる。

「好きだ、愛してるって口ばっかりで、
 ……また君に、ひどいこと、したのに、
 こんな僕の側にいてくれて、たくさん、愛してくれて、」

穏やかに笑んで細められた目の端をそっと撫でて、
ありがとう、と綴る声が震えてしまう。
握り込んだ絡めた指をそっと解いたら、抱き締めようと背に手を回して、
鼻先が触れ合うほどの距離で、愛しい藤色を、じ、と見つめ返す。

「嫌なんて思わないよ、…もっとたくさん、触れてたい。
 君に触れるのも、触れられるのも、すきなんだ、」

長谷部国重 「愛しているよ、
 …友愛でも、親愛でも、恋情としても」

お前ひとりだけを、此処まで想ってしまった。
すると撫でた頭蓋の丸みを、覚えていよう。

乱雑に涙を拭う様子に、眉尻を下げながら
痕になるぞと声を向けるも、止めはしない
笑みを浮かべようとしたのだろう其の顔を見上げて
どうせこちらも、綺麗にわらえてはいないんだろう。

「……良いんだ、
 何度も繰り返させているのは、俺だから。
 疾うに、知れているのに
 何時までも諦めきれなかった」

「愛してくれたのは、嬉しかった。
 礼を言うのは、俺の方だよ、光忠」

言葉だけでも、触合うだけでも
其の時の精一杯を向けてくれたのだから。
目許を撫でる手の柔さに、藤色を細めて
背に回して貰った手に、今は甘えて、己からも身を寄せた。

「うん、……うん、……そうだな。
 ありがとう、… お前に抱き締められると、安心する」

鼓動が奇妙な程冷えていた
双眸を伏せ、肩口に顔を埋めるように視線から逃れ
数秒ほども、抱き締めて貰えれば身を離す心算で。

「かえろうとおもう。
 ……夢を、覚まさないとな」

長船光忠 柔らかく穏やかな声と優しい指先に、僕を宥めようとする意図は察するのに、
笑みを浮かべたつもりの口の端が歪んでしまう。
拭ってもまた涙が落ちてく一方で、駄目だと思うのに止まらない。

「一緒に居られると思ったんだ、一緒に居たかったんだ、
 諦められなかったのは、きっと、僕のほうだ…、
 …君と居るのが、……しあわせ、だったから、」

僅かに低い体温をそっと、包むように抱き締めて、
ただ黙って、穏やかな声と、静かな呼吸の音を聞いていた。
鼓動も体温も呼吸も、すべてが愛おしい。

「そう、だね、……もう、帰らない、と、」

口ではそうは言いながら、腕の力は抜けないままで、
ず、と洟を啜りながら背中を揺らしているのは、
きっと、抱きしめた体にもそのまま伝わっている。
放さないといけないと分かっているのに、
離れていこうとする身体を、腕の中から離すことができない。
ますます強く力が籠るばかりで、腕を解けそうにない。

「ごめん、ね、……もう…、もう、やめるから、」

どうして手を放せないんだろう、
どうして涙が止まってくれないんだろう。
ごめんね、とどこへ向けたのかも分からない謝罪が、
酷く上ずって震えた声になってしまうばっかりだ。

長谷部国重 世界の中でたったひとり
ただひとりだけから、愛も欲も向けられたかった。

ずっと、共に生きていきたかった。

「……俺が、俺で
 お前の望む俺に、なれずにすまなかった。」
「お前を、幸せにしたかったよ」

穏やかな愛を注がれて
兄弟のように、家族のように、
親しい友人としてだけ、付き合って往ければ
此奴に、こんな顔も思いもさせる事は、なかったのだ。

抱き締めてくれる体へ、そっと手を伸ばし
其の背を柔らかにたたく
泣きじゃくりながら、腕の力を抜かない様子に
今更、嬉しく思ってしまうなんて、我ながら浅ましい心をしている。

頭蓋を寄せて、蟀谷にすりと小さく懐けて
今だけ、これだけ、触合っていたかった

ごめんね、の声に、無意識に入っていた力を抜いて
背を柔く叩いていた手をするりとはずす

「もう、眠って仕舞おう。
 俺はかえるよ。
 夢のお前まで、苦しめてすまなかった」

「……お前に、何も望まない俺なら、
 お前と一緒に、生きていけたかな」

欲してほしいなんて想いも抱かず
求めてほしいなんて我儘も言わず
穏やかにわらうお前の隣で
抱き合うだけで満ち足りる様な

叶いもしない『もしも』は
幾つも幾つも積み上げて崩れるのを見送ったのに
未練がましい事がほろほろ、零れて声が揺れる

嗚呼、違う
伝えたかったのは
遺したかったのは、そんな言葉ではなくて

「愛しているよ、
 …ありがとう、光忠。」

長船光忠 「違うんだ、僕が欲しい君なんて、最初から君しかいないのに、
 僕が、…もっと上手に、愛せたら、
 ……一緒に幸せになれるんだって、分かってるのに」

「苦しんだのは、君のほうだろ。
 ぜんぶ、僕のせいだから、もう謝らないで…」

泣く子をあやすように背中に触れた手に従って、
ゆっくりと強張ってしまった腕の力を抜こうとする。
狂った呼吸も少しずつ宥めて、
擦り寄ってくる丸い頭におずおずと手を動かせば、
そっと髪に差し入れた手で、指の先で梳くように髪を弄んで。

「……僕は、君がぜんぶ、すきだよ。
 君の想いごと、望みごと、ぜんぶ、」

何の慰めにもならないけど、と震える声で自嘲してみせて、
ようやくわずかに身体を離して、長谷部くんの顔を見下ろす。
強張った手のひらで、そっと包むように頬に触れて、
揺れる声で『もしも』を紡いだ君の目の縁をゆっくりとなぞる。

「長谷部くんと、まだ、離れたくない、…君の側に、居たい、
 君が欲しい気持ちじゃないって、君が苦しむだけだって、
 分かってるのに、……愛してるんだ、」

酷いことを言っていることとくらい、分かっている。
僕が僕である限り、きっと長谷部くんを苦しめ続ける。
何度繰り返しても、きっと僕では駄目なんだと、
痛いくらい、苦しいくらい、分かっている。
それ、でも。

「ねえ、君と一緒に、生きていたいんだよ、

 …それが、嫌だって言うなら、
 僕も、つれていって、」

おねがい、とせめて笑って、涙声を囁くように落として、
背けられることがないなら、そっと、唇を重ねよう。
音もさせず、体温を知るように、
ほんの一瞬触れ合うだけのキスに、ゆっくりと目を伏せる。

こうやって触れるのを許されるのは、
最後になってしまうのかもしれないな。

長谷部国重 「俺はお前を穏やかに愛せないし、
 お前は俺を欲しいとは思わない
 互いに、駄目だったんだ。どちらかだけじゃない。」

頭蓋の丸みを撫でられて、吐息でわらう。
想いごと、望みごと、愛されているのも
もう知っているから

「知ってるよ、…知っている、
 お前が俺を好きでいてくれる事も、
 欲がないだけで、愛してくれている事も」

厭と言う程、知っているから。
見下ろされた顔は穏やかに凪いでいただろう
頬に触れる掌は、相変わらず、温かい。

「……そうだな。
 俺が、ひたすら耐えられるならそれでも良かった。」

「結局何度も出来ると思い込んで、繰り返して
 ……出来ないって、漸く、理解したんだ。
 俺だって、お前の傍にずっと…ずっと居たいのにな」

こんな
こんな浅ましいものさえ、無ければと
嫌悪して憎悪して侮蔑しても棄て切れなかった
一雫の期待をいつも探して求めて手を伸ばした

「光忠、 」

連れて行っての声にはこたえずに
重なる唇を拒む事も無かった。
冷えた唇に熱を与える様な其れに、離れてから息を薄く逃す。

「忘れてくれとは言わないし、望まない、…望んでやれない。
 覚えていてくれ、
 俺の顔も、声も、…全部、出来る限りで良いから」

少しだけ眉尻を下げて笑った。
そっと手を伸ばし、静かにその身体を押しのけて
敷かれている布団へ移動しよう。

長船光忠 全て諦めたようにただ受け入れるばかりの唇が、酷く冷たい。
凪いだ声で綴られる願いを受け入れることもできなくて、
しゃくり上げるのも止められないまま、
駄々をこねるみたいに、ふる、とかぶりを振った。

「嫌、だよ、そんなの、
 火の中だって、どんな痛みだって、君と一緒に果てられるなら、
 君の居る場所で、きみと一緒に終われる、なら、」

それが幸せなんだ、…とは、言えなかった。
ただ穏やかに笑むのを見て、ぼた、とその頬に雫を落として、
僕を押しのけようとした手を、強引に掴んで畳に縫い付ける。
痛いほどの力が籠っても、離せなくて、
ちがう、と涙に揺れた声で、繰り返す。

「…ーーっ、ちが、う、違うんだ、そんなん、じゃない、…っ」

一緒に終わろうなんて、何処へだってついていくなんて、
何度考えたことだろうと、そんなことを言いたいんじゃない。

「……お願い、だからっ、……生きて、くれ!」

何に代えても生かしたいと、
どんなに意地汚くても、生きていてほしいと、
縋りついて、叫んで、子供のように泣き喚いた。

「君と共にあるために、生きてたい、よ、
 ……君が苦しむだけなんだって、わかってる、
 それでも僕だって、…君の側に、居たいんだ、ずっと」

「は、せべ、くん、お願い、だ……、
 ぼくの、ため、に、…っ、生き、て、…くれよ、」

震える手で、その肩を掴んで、抱き寄せて、
骨が軋むほど、力を籠めて、こめて。

叶えられない想いを抱えて苦しみ続けろ、なんて、
酷いことを言っているのも、分かっている。
それでもただ、どこへも行かないで、側に居てほしくて、
縋りついた手で、震える手で、痛いほど、抱き締めている。

長谷部国重 かぶりを振る様子に、眼を細める。
のぞみが叶わないのは、もう慣れた。
いっそ忘れ去って貰う方が良いんだろう。
何処までも浅ましさが残るなと自嘲にわらう。

「……俺の願いというだけだからな、
 お前が、忘れるというなら、止められない。」

押しのけて、布団へ行こうとした手が掴まれて
其の手の強さへ、思わず息を飲み込む
縫い付けられる形で押し留められて
みし、と骨が軋むほどの強さを受け、
凪いでいた眼に、じわと困惑が浮かぶ

見上げた先の、ぐちゃぐちゃな顔を
初めて、視界に入れたような心地で
先程から、ぼたぼた落ちるしずくは
何度も、俺の顔を濡らしていたのに

「……なんで、」

ああ、
其の背を撫でてやりたいのに、
頭を、撫でて宥めてやりたいのに
手の自由が利かずにいる事がもどかしかった。

みつただ、と呼ぶ声はつとめて柔く拵えたが
滲む困惑と不可思議までは隠しようがない

「なんで、お前が、……そんな、
 そんな、……泣くんだ……?」

「ああ、…うん、…そうだな、
 お前の隣にいられる俺が、良いよな……
 ……否、……違うか。」

逃げ出そうとしたのは、俺だ。
耐え続けることが出来ないと理解して、
苦痛を自覚したが最後、離れようとしたのも。

「苦しみながら、居ろって、いうのか……?」

手の拘束が解けて
抱き寄せられる儘、抵抗もなく。
くたりと身体から力を抜いて、小さく零す。

「ひどい男だな、…相変わらず」

手を動かす事も儘為らぬ抱き締められる腕の中で
せめてと頭蓋を少しでも寄せて、

「生きてさえ、いれば良いなら
 ……好い加減に、関係性を戻そうか。」

「今更だけどな、
 友人に、戻ろう、長船」
「友愛なら、いつだってどれ程だって、向けていられる」

長船光忠 「…ん、分かってる、…ごめん、止め、なきゃ」

きっとひどく無様な泣き顔を、心底不思議そうに見上げられて、
つらいのは長谷部くんのほうなのに、
僕ばかりが泣いていてはいけないと思うのに、
浴衣の袖で、ぐい、と幾度か目元を擦っても、上手く止まってはくれない。
雫の滴った長谷部くんの頬を拭おうとそっと伸ばした指先には、
どうやったって愛おしさばかりが篭ってしまう。

触れるたびに辛い思いをさせるくらいなら、触れなければいいだけなのに、
苦しいだけだと分かっているなら、終わってしまえば楽なのに、
……ひどい男、と言われたとて、言い返す言葉もない。

「…酷いことばっかり、言ってるよね、…ごめん、
 でも、もうどうしていいか、分からなくって、
 それでも生きて、…側に、居てほしく、て、」

ぎゅう、と力いっぱいに抱き締めた腕の中、
甘えるように擦り寄る頭に、辿々しく震える手を運んで、
真っ直ぐな毛先を撫で付けるように、ぎこちなく動かす。
ふたりきりではまずされることのない苗字の呼びかけに、
指先が痺れたように強張って、
けれど、細く息を吐きながら、
長谷部くんに擦り寄るように、こく、と小さく肯いて返した。

「…分、かった、……
 友達なら、まだ一緒に居られるなら、
 …こいびとでいるのは、もう、やめる、…から」

いやだ、と我儘ばかり言いたくなる気持ちをねじ伏せて、
縋り付くように抱き締めて、震える声で、肩口に涙と共にぽつりぽつりと言葉を落とす。
長谷部くんが生きられるなら、それが一番いいに決まっている。

「おねがい、どこにも行かないで、
 …いなくならないで、…ずっと、側に居て……、」

長谷部国重 「無理に止めなくても良い、
 ……余り擦ると、痕になるぞ。」

強引に拭う様子へ眉尻を下げる儘、淡くわらう
伸びてくる指先を拒む事はない
何時だって、慈愛に近く愛されている事だけは知っていた。

「そうだな、…わかってる、
 お前の傍に居続けるために
 俺の気持ちひとつだけが、余分なんだ。」

傍に居て欲しいと、強く、強く抱き締められて請われて
こんなに、幼子のように泣きじゃくらせて
愛しているからこそ、かなえてやりたいのに
愛しているからこそ、かなえてやれないのが酷くもどかしい

俺の欲ひとつだけが、余分で

「……繰り返させてしまったけど、
 形でも、恋人でいられたのは、嬉しかった。
 有難う、光忠。」

求めるのは俺で、逃げ出すのも俺で。
片恋と思いたくはなくとも、独り相撲ではあったのだろう。
付き合わせてばかりだった嘗ての親友へ、頭蓋を寄せて
さいご、せめてこの一瞬だけはと恋人に礼を紡ぎ。

「夢からさめよう、
 現実でも、また別れ話かと思うと少し憂鬱になるが、
 ……かえらないと、な。」

夢の中ですら、欲されないものを
現に戻っては、繰り返すと思うと眩暈がするようだった。

長船光忠 「余分、なんかじゃないんだよ、
 僕が言えたことじゃないのは、分かってるけど」

柔い笑みと穏やかな声に、じくじくと胸が痛んで、
ひく、と整わない呼吸のまま、髪に触れた指先に、妙な力が籠ってしまう。
甘えるような仕草に、いっそうゆっくりと細い髪を指で梳いて、
それから漸く少し、力を籠めすぎた腕を解いて、身を離す。

ありがとう、と言われるようなことが、僕にできていたのか。
そう思えばただ居た堪れなくて、視線をふら、と泳がせた後、
ゆっくりと顔を上げて藤色を覗き込んだ。

「愛せると思って、…思い込んで、また、傷つけた、
 繰り返して、君を苦しめただけ、だったね。
 ……ごめん、ね、…ありがとう、」

声が、震えてしまう。
勝手な思い込みで傷つけて、それを正してくれるのは、長谷部くんで。
繰り返させるのは、いつも僕だし、
繰り返していることに傷つくのは、いつも君だ。
愛ばかりを籠めて、名を呼んでくれる唇に、
恐る恐る、涙で濡れて湿っぽい唇を寄せる。

「うん、……帰ろう、か」

頬をそっと撫でて、せめて最後ばかりは笑おうと頬に力を籠めて。
上体を起こしながら、長谷部くんの腕も引いて一緒に起き上がろうか。

長谷部国重 「……お前と俺の間では、
 少なくとも、余計だったんだよ」

お前にとっては特にと
言葉にしそうになって飲み込んだ。
恨み言で終わらせたい訳では無かった。

何度も否定する都度に、
膚が薄く粟立ち息が詰まる心地で
緩くなった腕の中、つとめて息を逃すように吐く。

「いいんだ、…求められるような人間じゃない。
 お前は、お前が持てる精一杯で愛してくれただろう
 其れだけで、満足できない方が問題なんだ。」
「俺が苦しんでいるなら、其れは俺が原因なんだよ」

諦めきる筈の其れが、またどろりと頭を擡げる前に
はやく、
はやく、遠ざけなければいけない。

なのに、寄せられた唇を拒めもしないのだから浅ましい。
己からも押し当てにいきたいのを、せめて堪えて身を離す。

「ああ、かえらないと、
 右の布団で寝るんだったよな……」

幾つか提示されていた不思議な文面
何だったか、と思い起こしながら
腕を引かれる儘、畳の上から身を起こし布団のもとへ。

敷かれた布団に潜り込んで、身を小さくたたむように丸くなる。

長船光忠 「君が、悪いというなら、僕だって悪かった。
 きっとどっちも悪くて、互いのせいで一緒に苦しんだ。
 お互いに、噛み合わないのに、認められなかったんだから、
 …それじゃ、駄目なのかな」

君の想いは余計ではなかったと、どうか否定しないでほしいと、
そう言いたくても、言える立場でないのは分かっている、から。
触れるばかりのキスは、名残惜しく感じながら、それでもそろりと離れて、
冷えた肌をゆっくりと撫でた手も直ぐに落とす。

KP 光忠も君と一緒に布団に潜り込む。

胎児のように小さく丸まったのを見て、すり、と肩や腕を掌でさすって、
寒くないように布団を肩まで引き上げるよ。

長谷部国重 「……無い物をひねり出すより、
 邪魔な物を処分する方が現実的だろう」

無い物は無いのだと
そういえば幾度も言われていたのだ。
現実的といいながら、さいごまで出来はしなかった。

布団の中で背を向ける形で丸まって
温かい掌を受ける膚は、粟立っていたけれど
浴衣越し、気付かれていない事を祈るばかり。

布団を掛けてもらえば、ありがとうと小さく零し。
閉じた眼を開く事の無い様にかたく瞑る。

長船光忠 「でもきっと、大切なものを棄てるのは、きっとすごく、苦しいよ」

小さく呟かれた声には、うん、とひとつ頷いて返すに留めようか。
背を向けられてしまったのを見ながら、きゅう、と僕も目を瞑る。
離れるのが名残惜しくて、後ろから髪に触れて、
けどそれもつらいのかな、と思い直して、直ぐに手を落とそう。

KP …さて、このまま眠る、で大丈夫かな?
他にしておくことはない?

長谷部国重 そうだな、大丈夫だ。

KP はーい、了解。
君たちは二人で、一つの布団に潜り込みます。
布団の中は暖かな陽の光のような香りがして、一気に眠気が押し寄せてくるでしょう。
とろとろと瞼が重たくなって、次第に下がってきます。
そうして君たちの意識は、眠りの海に沈み込んでいきました。
なんだか不思議な夢を見たような気がする、と思いながら君は目を覚ましました。
確か、不思議な場所で、君の大事な人と何かをしていたような。
一緒に食事をして、風呂に入って、それから──そこまで考えて、考えるのをやめました。
不意に電話が鳴り響いたからです。
そこには、見慣れた大事な人の番号がディスプレイされていました。

長谷部国重 夢の内容を、何処まで覚えているんだろうか
寒くて痛くて、なのに目覚めたくない想いが重たく蟠るような

ふと覚醒しきらぬ意識がひといきに浮上して
枕元の端末を手にして、思わず固まる

「……、はい」

何時もよりも数コール長く待たせただろう。
応答ボタンを押して、短い応答の声を向けた。

長船光忠 「あ、…はせべくん、ごめんね、こんな朝早くに…」

「あのね、夢に、君が出てきたんだ。
 不思議な猫のいる温泉旅館でさ、
 君とご飯食べて、お風呂入って、……、たくさん、お話して、
 …それで、声が、聞きたくなったんだ」

へら、と不器用に笑って応対する。
寝起きざまの眠そうな声ならまだしも、
少しばかり声が震えているのが、
電波越しに伝わっていないといいのだけど。

KP 夢の内容は、光忠の言葉で、ああ、たしかにそんな夢だったかな、と思える程度までは覚えているかな。

長谷部国重 鮮明に覚えていることはできないのか?

KP ああ、それがいいならいいよ!

長谷部国重 「……ああ、いや、丁度起きた所だ」

目覚ましに丁度良かった、と
寝起きの掠れた声で笑おうとしかけて、止まる

「―――そうか。
 俺もお前と、旅館で過ごす夢を見ていたよ。
 ……猫が喋って、風呂に入った。
 同じ夢を、見ていたみたいだな。」

震えている声に、ああ、と思い出す夢の数々
何もかもを、思い出して ひとつ息を吐く

「お前の夢の中で、俺は酷い事をしなかったか?」

長船光忠 「そ、っか、……おんなじ、夢か」

ひどいこと、と聞いて小さく息を飲んで、
けれどそれほど間は置かずに、されてないよ、と笑って言おうか。
したとすれば、むしろ僕のほうだけど、と思いつつ、
穏やかな声を心がけて口を開こう。

「されてないよ、大丈夫。
 傷つけられてもないし、傷が残ってもいないよ」

長谷部国重 「其れなら良かった、
 …せめてお前の夢の中でくらい、大人しくしていたいからな」

「俺の夢では、散々だった。
 お前を困らせて、泣かせてばかりで」

聞いた夢の符丁は多く合えども
何処まで同じ物かを知れる訳ではない
軽い調子で紡ごうとして、掠れた声は未だ寝起きと誤魔化せるだろうか。

「しかし、…本当に欲しい物も、
 どうすれば良いかも知れた気がするからな、
 きっと、……悪いばかりでは無かった」

ベッドの上に身を起こし、座る姿勢に変える。
カレンダーで予定をちらと確認すれば、本日は休日で、
急いでベッドから飛び起きる必要も無さそうだ。

長船光忠 「…、泣いて、わがまま言って、
 困らせてたのは、僕の方、じゃなくて?」

笑おうとしても、やっぱり声が震えたままで、
スピーカー越しに聞こえる普段と違う声色に気が付きつつ、
やっぱり仔細までは読み取れなくて、少しばかり口籠ってから声を絞ろう。

「……あ、の、…今から、会いに行ってもいいかな、
 君の声聞いたら、顔が見たくなっちゃったんだ、けど」

長谷部国重 「お前を泣かせていたっていっただろう?
 ……怖い夢を見たような声をしてるな、
 やっぱり、つらい事をされたんだろう、…俺に」

夢の中でも、碌な事をしない
そんな事は、今し方思い知ったばかりだ

告げられた其れに、数秒近く間がひらく。

「……――また困らされても良いなら。」

二度と逢わず、離れる覚悟を決めていたとしても
会いたいと求められる事に、酷く弱い己が情けない。
思いの外、悲痛な色が滲んだ声を誤魔化す様に、乾いたわらいを落とす。

「冗談だ、……鍵持ってるだろう、
 いつでも、来て良い。今日は休みだから、家に居る。」

長船光忠 「怖くなんかなかったよ、
 君とたくさん話ができて、楽しかった、し、
 …まあ、悲しかった、かな」

痛そうに紡がれた声に、どう返答していいかと迷ったのもつか
の間、
冗談だ、と返された言葉に、短く息をついて、うん、と頷いて返そう。

「…あ、りがとう。すぐ、向かうから、待ってて!」

長谷部国重 明らかな安堵に、口端を歪めてわらう
夢でも現でも、何も変わらない事実が在る

「ああ、特に何も買ってこなくて良いからな。
 気を付けて来いよ、長船。」

茶を出す位は出来るだろう
買い足した食器も何もかも、その儘だ。

通話を切って、迎え入れるまでにやる事が出来た。
掃除と、片付けと、処分を始める為にベッドから抜けだして―――

長船光忠 ひとつ頷いて返した返事が不安げなものになりつつ、
通話を切って、慌ただしく出かける準備に取り掛かるだろう。

KP =====

クトゥルフ神話TRPG
「猫のお宿」空猫様制作

シナリオクリア
【END2 君と同じ夢】

=====
…といったあたりで、とりあえずシナリオは〆させて貰おうか。
話したいことはやまやまだけども、それはまた後で…

長谷部国重 そうだな、お疲れ様。

KP ああ、一旦はお疲れ様!

長谷部国重 1d4+1d2 【SAN報酬】
Cthulhu : (1D4+1D2) > 2[2]+1[1] > 3

system [ 長谷部国重 ] SAN : 54 → 57

長谷部国重 CCB<=82【目星】
Cthulhu : (1D100<=82) > 87 > 失敗
1d10
Cthulhu : (1D10) > 7
82→89

KP お、すごいね!?

長谷部国重 成長するとは思わなかった。

KP 目星ほぼ90……ひゃあ……

長谷部国重 もう一度成長ができるが、これは成長前の値で振るのか?

KP そうだね!シナリオクリア時の値で大丈夫だよ~

長谷部国重 CCB<=82【目星】
Cthulhu : (1D100<=82) > 35 > 成功
ん、流石に二度は無理か

KP 流石にね…いやまあでも充分すごい値になったよ…

長谷部国重 見落としがなくなるといいんだが。